ポジティブ
2006年6月23日


日本を出発する前、インターネットでモントリオールとインディアナポリスの気温を調べたら、どちらも約30℃と予想されていたので、迷うことなく半袖ばかりをスーツケースに詰め込んで、成田から出国した。
モントリオールに到着して、驚いた。涼しいのである。まあ、空港に到着したのが夜だったから、「明日からはきっとまた暑くなるだろう」と、楽観視していたのだが、甘かった。木曜日は朝から小雨。午後になって太陽が一時、顔を覗かせたが、夕方激しい雨がモントリオールを襲った。
涼しいのは、モントリオールの天気だけではない。プレスルームもエアコンの設定温度が低く、涼しい外気よりも、さらに寒いのである。モントリオールのプレスルームは18戦中もっとも狭く、蒸し暑かった昨年はさらにエアコンが効かなかったために、欧米のプレスを中心に「プレスルームの環境を改善するように」という署名運動が起き、ボクもその要望書にサインした。だから、彼らもその要求に応えようと努力したことは認める。しかし、20℃の外気温よりも寒く感じるほどエアコンの室温設定を低くするというのは、地球環境を保全しようという時代の流れに逆行してはいないだろうか。
そんな寒いプレスルームが、木曜日の午後5時すぎ。日本人のボクとその隣に座るクロアチア人にとって、さらに寒い事態となった。サッカーの話である。1対2、1対3と引き離されて惨敗した日本に比べて、2対1とリードしていたにもかかわらず、3対1にできず、2対2の引き分けにされて予選突破ならなかったクロアチア。その結果を見て、クロアチア人プレスはかなり落胆していた。そして、こう言った。
「これでF1の取材に集中できる」
素晴らしいポジティブシンキングである。さすがは歴戦の強者。見習うべく、ボクもそろそろ原稿に集中するとしよう。
次回、GP Diaryは6月24日に更新の予定です。お楽しみに。
4.361km
2006年6月24日
1周4.361km。モントリオール・サーキットの正式名称。サーキット・ジル・ビルヌーブの全長である。約1kmの長いバックストレートを持ち、最高速が時速330km/hにも達する高速型のサーキットであるモントリオールの全長は、じつは短い部類のサーキットに属する。
ヘルマン・ティルケが近年に建設を手がけたセパン(マレーシアGP)は5.543km。バーレーンも5.412km。上海やイスタンブールも5km以上あり、18戦中5km以下のサーキットは9つだけとなった。
その4km台のサーキットの中でも、モントリオールの4.361kmはさらに短い部類のサーキットである。3.340kmのモナコを除けば、4.192kmのインディアナポリス(アメリカGP)、4.309kmのインテルラゴス(ブラジルGP)に次いでショーテストなサーキット。「ガードレールのないモナコ」と例えられているハンガロリンク(ハンガリーGP)が4.381kmとモントリオールよりも20m長いことを考えれば、いかにモントリオールが箱庭型のサーキットであるか、よくわかる。
にもかかわらず、最高速が高いモントリオールでは、ウイングはレスダウンフォースタイプとなり、シケインやヘアピンといった低速コーナーでは、暴れまくるクルマをねじ伏せなければならない。いわゆるブレーキングスタビリティ(安定性)が大切となってくる。
モントリオールのブレーキングスタビリティは一発のタイムを競う予選でのスピードだけではなく、レースでの安定性にも関係してくる。パーマネントサーキットではないモントリオールは、コンクリートウォールが近く、わずかなブレーキングミスが命取りとなりかねない。
金曜日、パナソニック・トヨタ・レーシングはブレーキに関するセッティング変更を何度か行っていた。ベストタイムを出すセットアップだけでなく、日曜日に向けてのさまざまな準備が必要となるモントリオール。その結果が出るのは、日曜日スタートしてから305.270km(70周)先のこととなる。
次回、GP Diaryは6月25日に更新の予定です。お楽しみに。
スーパーラップ
2006年6月25日
「トゥルーリはいつも予選でいい走りを見せていますが、今日の4番手はわれわれにとっても、非常に心強い結果です」
予選後、そう評価したのは、ブリヂストンの菅沼寿夫テクニカルマネジャーだった。確かにヤルノの予選で見せるアタックは、時としてわれわれの予想を超えた次元のスピードを披露する。それは、特に予選前になんらかのトラブルがあったときに発揮されることが多い。
例えば、昨年のこのカナダGPでも、ヤルノは予選前のフリー走行でトラブルが発生して、セッティングの確認ができないまま、午後の予選に臨み9番手を獲得している。今年は土曜日はトラブルフリーだったが、前日の金曜日のフリー走行でギアボックストラブルに見舞われている。
土曜日午前中のフリー走行は、ひたすらユーズドタイヤを履いて、レースに向けたセットアップの熟成に時間を費やしており、ニュータイヤでのアタックラップはこの日、午後の予選が初めてだった。
予選の第2ピリオドは、2番手のミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を筆頭に、じつに13人のドライバーが1分15秒台にひきめく、大混戦となった。結果的に14番手に終わり、最終ピリオドに駒を進めなかったラルフ・シューマッハだが、10番手のジェンソン・バトン(ホンダ)とのタイム差は100分の7秒。僅差だった。予選後、R・シューマッハはグリップ不足を嘆き、14番手に終わった今回の予選に落胆していたが、それほど悪い予選だったとは思わない。
それよりも、トゥルーリのアタックが素晴らしすぎたのである。もちろん、どんなタイヤを選択し、どれくらいの燃料を最終ピリオドで搭載していたのかによって、最終ピリオドでのトップ10のタイムは大きく上下するので、土曜日の段階で4番手というポジションを評価することはできない。
しかし、モントリオールでのトゥルーリには、ヨーロッパラウンドで降りかかっていたいた災難がウソだったかのような明るさがあった。それは、まるで前日までの曇り空から一転、青空となったモントリオールの天気のような変化である。モントリオールは日曜日も、晴天の予報。熱いレースを期待したい。

次回、GP Diaryは6月26日に更新の予定です。お楽しみに。
フォア・ザ・チーム
2006年6月26日


多くのクルマがライン上にクルマをとどまらせるのに苦労しているのが、コースサイドで見ていても、よくわかった。日曜日のモントリオールは、土曜日同様、晴天となり、路面温度も40℃に達する絶好のレースデー。路面には金曜日と土曜日の走行でついたラバーが乗っていた。22台でレースが行われる日曜日は、最高の路面コンディションになる、はずだった。
ところが、ほとんどのドライバーがグリップ不足に悩まされるのである。原因はモントリオールの路面と各ドライバーが選択したタイヤに相関しているものと考えられる。モントリオールの路面は非常に滑らかで、摩擦抵抗が少ないアスファルト舗装である。それは、「今年改装されたモナコよりもツルツル」(新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクター)というものだった。要するに滑りやすい路面なのである。したがって、ドライバーはグリップを得るために、軟らかめのコンパウンドを選択したくなる。ブリヂストン勢のトップ3チームではウイリアムズがソフトを選択。しかも、彼らのソフトはモナコGPで使用した超ウルトラソフトと言われるほど軟らかいものだった。
そして、パナソニック・トヨタ・レーシングのラルフ・シューマッハもまた、ウイリアムズが選択したのとは異なるが、ソフト側のタイヤを選択していた。ところが、モナコよりも高速タイプであるモントリオールでは、その軟らかいコンパウンドでは、ムービングと呼ばれるリアタイヤがコーナリング中にフラつくような症状を起こしてしまうのだった。そのため、今回は通常フロントタイヤに発生することがあるグレイニング(ささくれ摩耗)がリアタイヤにも発生。しかも、それは横方向だけでなく、縦方向からも受け、ソフト系コンパウンドを装着したドライバーのタイヤは「ズルズルの状態」(浜島裕英ブリヂストンMSタイヤ開発室長)だったという。
それはR・シューマッハがクルマにトラブルがなかったにもかかわらず、「クルマの調子が悪い」と勘違いして、ピットインしてくるほどだった。データを確認しても異変は見あたらないチームは、ピットインしてきたR・シューマッハのサスペンションや、タイヤをチェックしたが、どこにも悪いところはなかったため、R・シューマッハはそのままコースへ復帰。しかし、「グレイニング(ささくれ摩耗)はフロントタイヤの場合は、ステアリングをきる作業によって徐々に取れますが、リアタイヤは一度グレイニングが発生するとなかなか取れない」(浜島MSタイヤ開発室長)ため、レースを通してR・シューマッハはペースが上がらない苦しいものとなった。レース終盤の2度目のセーフティカーランで、コースアウトしたR・シューマッハは、これ以上の走行は危険だと判断し、自らピットでレースを終える決断を下すのである。
そんな中、フェラーリ同様、ハード側のタイヤをチョイスしたのが、予選4番手を獲得していたヤルノ・トゥルーリだった。トゥルーリもスタート直後はフロントタイヤに発生したグレイニングに悩まされ、ペースが上がらなかったが、グレイニングが取れた後は快調なペースで入賞圏内を走行。しかし、今回のレースでも試練がトゥルーリを襲うのである。レース終盤にエンジンがミスファイアを起こすのだ。「でも、今回はなんとかして完走したかったし、ポイントも欲しかった」というトゥルーリは、無線でエンジニアとエンジンの調整しながら、6位を死守したのである。
「僕たちの前には、まだまだ強豪がたくさんいる。でも、今日のレースでは僕たちもまた前進していることを証明したと思う。僕が獲得した3ポイントで、コンストラクターズ選手権でポジションを1つ上げて6位になったんだから」
レース後、自分の成績よりも、まずチームが一歩前進したことを称賛していたトゥルーリ(写真右)。自身、今季初入賞。そして、昨年のイタリアGP以来のポイント獲得でもあった。
「ドライバーラインアップは、このままでいきたい」。レース前、そう語った木下美明TMG副社長。そうなることを、僕も願いたい。
次回、GP Diaryは6月30日に更新の予定です。お楽しみに。
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北米ラウンド第1戦、モントリオールからオリジナルグッズをプレゼント!
モントリオール市街に位置する美しいサーキット、ジル・ビルヌーブ。高速バトルが展開されるカナダGPから、今回もレアものをご用意しました。ふるってご応募ください!
応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。