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Rd.02 マレーシアGP

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変更

2007年4月6日

前戦オーストラリアGPのレース終盤、ラルフがエンジンのニューマチックバルブにトラブルを抱えていたと3月19日のDiaryで書いたが、実はラルフは8位でチェッカーフラッグを受けた後、パルクフェルメ(車両保管所)に戻らずに、コース上でクルマを止めてレースを終えていた。ニューマチックの圧力が急激に下がり、チームから無線で「チェッカーフラッグを受けたら、すぐにクルマを止めるように」という指示が飛んでいたからだ。

2グランプリを走りきる前にエンジンを壊してしまうと、次戦でペナルティを受けるだけでなく、壊れた原因究明もしづらくなる。チームの機転とラルフの素早い処置で、RVX-07はブロウすることなく、FIAの封印を受けてTMGへ送り返された。そして原因究明の結果、ニューマチックの圧力低下はエンジン本体のトラブルが原因ではなく、供給ラインに問題があることが判明。その部分の交換はレギュレーションで認められているため、ラルフのエンジンは本体を変更することなく、メンテナンスが施されて、2グランプリ目となるマレーシアへ空輸された。

初日、フリー走行1回目。ラルフは22周を走行。タイムは1分37秒052で、これは今回持ち込まれたハードとミディアムのうち硬いほうのタイヤで記録されたもの(写真下)。直前のセパン合同テストでのラルフのベストタイムは1分35秒751。セッションが進むにつれて、まだまだタイムアップしていくことだろう。

エンジンは変更されなかったが、今回のマレーシアGPから、タイヤの識別方法が変更されたことはお伝えしておかなければならない。オーストラリアではタイヤのサイドウォールの「POTENZA」と「BRIDGESTONE」の間に白丸がペイントされていたが、マレーシアでは内側から2本目のタイヤの溝が、1周まるまる白く縁取られていた。こうすることで、停止しているときだけでなく、走行中も識別が楽になり、観戦する興味が沸くのではないかと思われる。

マレーシアGPは初日から30℃を超える猛暑。桜が散り始めた日本から来たばかりのボクにとって、この温度変化は大きく、早くも夏風邪をひいてしまった。

次回、GP Diaryは4月7日に更新の予定です。
お楽しみに。

質問

2007年4月7日

「隣にいる彼女は、おまえの奥さんか?」と、数人のヨーロッパのプレス仲間に尋ねられた。いつもセッション中はピットレーンで取材することが多く、プレスルームにいても、タイミングモニターばかりを見ているので、隣がどんな人か、ボクはあまり興味がない。しかし、複数の人間に尋ねられれば、気になるもの。そこで初日の取材を終えて、夕方プレスルームに戻ってきたボクは、さっそく隣の席にどんな人が座っているのかを確認した。

座っていたのは、見知らぬ女性だった。ただ、日本人のボクが「日本人か」と思うほど、和のテイストを持った女性で、名前を尋ねてビックリした。「ユイ」さん。正確には「ユー・イー」と発音するのだそうだが、日本人には「ユイ」と聞こえる。地元クアラルンプールの東方日報新聞の体育組記者(スポーツレポーター)だそうで、2000年からマレーシアGPを取材し、昨年は中国GPにも行ったという。

しかし年に1回の取材では、現在のF1は複雑すぎるようで、ボクが席にいる間は、ほとんど質問してくるのである。「エンジンを交換するとどうなるのか?」、「土曜日はタイヤを何セット、使えるのか?」、「どうしてミディアムを履いて走行するドライバーと、ハードを履く者がいるのか?」、「雨が降ったら、タイヤは何を履けばいいのか」、「ピットレーンの速度制限は時速何km/hで、どんな罰金が科せられるのか?」、「金曜日のフリー走行に比べて、ほとんどのドライバーが土曜日のフリー走行は周回数が少なかったのはどうしてか?」

極めて基本的な事柄だが、これらの答えを説明していて気がついた。すべて最近変更されたレギュレーションと関係しているのである。したがって、たまにしかF1を見ない人にとっては、こうした基本的なことすら意外と知らないことなのかもしれない。そして、この基本がわからないと、いまのF1は興味が半減されるのである。

ユイさんはライコネンのファンで、土曜日午前中のフリー走行でライコネンが7周しか走行しなかったことが気になって、お昼休みにこう尋ねてきた。「ライコネンはやっぱりエンジンを交換するんですか?」

確かに、ほかのドライバーが軒並み10周以上走行している中、ライコネンとコバライネンだけが、ひと桁の周回数。しかも、そのコバライネンはクルマにトラブル(燃料ポンプ)を抱えていたと聞けば、ライコネンもトラブルが原因と考えるのは当然かもしれない。だからボクは、丁寧に次のように説明した。

「今年もエンジンは2グランプリを使用しなければなりませんが、今年は金曜日が例外で、フリー走行1回目と2回目はどんなエンジンで走ってもいいんです。だから、ライコネンは金曜日にトータル53周も走行しました。しかし土曜日からは2グランプリ・ルールとなるので、ライコネンはオーストラリアGPで完走したエンジンで走らなければなりません。しかもエンジンに少し不安を抱えていることは確かです。だからライコネンは、必要以上の周回を走行しなかったんだと思います。それにフェラーリ勢は、金曜日にセットアップを進めることができています。だから、そんなにたくさん走る必要もなかったのでしょう。そしてエンジントラブルに関しては、交換するほど深刻なものではないと、金曜日にチームからも発表があり、ライコネンはエンジン交換することなく、このまま予選とレースに臨むでしょう」

それを聞いたユイさんは「良かった。じゃ、もう安心ですね」と笑みをこぼした。

だから、ボクは最後にこう言った。「F1では、チェッカーフラッグが振られるまで、何が起きるかわかりませんよ」

それからユイさんは、もう質問してこなくなった。F1を説明するのは、なかなか難しいものである。

次回、GP Diaryは4月8日に更新の予定です。
お楽しみに。

リザルト

2007年4月8日

終わってみれば、オーストラリアGPと同じ8番手と9番手という結果に終わったパナソニック・トヨタ・レーシングの2人。しかし、この日の2人には、いくつかの不運があった。

最初の不運は、ヤルノである(写真左)。午前中のフリー走行3回目。通常、このセッションは硬めのタイヤでレースセッティングを煮詰めていき、セッション終盤に柔らかい方のタイヤで予選アタックのシミュレーションを行う。きちんとプログラムを消化したラルフは1分36秒245で9番手だったのに対して、ヤルノのベストタイムは1分37秒473で20番手に終わった。セッション終盤に電気系のトラブルが発生して、今回の柔らかい方のタイヤであるミディアムを装着することなく、フリー走行を終えてしまったからである。

それでも、ヤルノは予選ではそんな不運があったことを感じさせない走りを披露してくれた。

一方、チームメートのラルフは、朝から順調に戦っていた。ところが、ヤルノとともに進出した予選最終ピリオドに入った直後にトラブルが発生する。燃料を消費するためのバーン・オフ・ランの1周目に右リアタイヤの空気圧に異常が発生したのである。通常は1列縦隊でしばらく走行するのに、ラルフが次々とオーバーテイクされていったのは、そのためだった。

幸いだったのは、ラルフがミディアムのユーズドタイヤを装着していたことだった。第1ピリオドで1セット、第2ピリオドで2セットのミディアムを使用していたラルフには、あと2セットのユーズド・ミディアムが残っていた。したがって、緊急ピットインしたラルフは右リアのみ交換してコースに復帰することができたのである。もし、オーストラリアGPと同様に硬めのほうのユーズドタイヤ、つまり第1ピリオドの1回目のアタックで履いたタイヤをつけて、最終ピリオドをスタートしていたら、もう硬い方のユーズドタイヤは残っていなかったため、ピットはもう少し慌ただしくなっていたことだろう。

このような状況で、チームも冷静な対応を行っていた。雨がポツリポツリと降り出したのを見て、2人を早めにピットインさせ、1セットしか残っていない柔らかめのタイヤでのアタックを開始するのである。結局、雨はすぐに上がり、もう1周待ってアタックを行ったニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)にかわされるものの、ヤルノもラルフもそのロズベルグとは約コンマ1秒差だったことを考えると、パスカル・バセロン(シャシー部門シニアゼネラルマネジャー)が予選後に語っていた「BMW勢に近づき、ルノー勢よりも速かったというのは良いニュースだが、6番手が狙えると考えていただけに、失望せずにはいられない」という言葉にもうなずける。

オーストラリアGPと同じ予選結果だった土曜日のセパン。しかし、その内容はアルバートパークとはまったく異なっていたことを伝えておきたい。

次回、GP Diaryは4月9日に更新の予定です。
お楽しみに。

タフ

2007年4月9日

「夏風邪をひいた」と4/6のDiaryの文末に書いた。しかし、風邪をこじらせていたのはボクだけではなく、ホテルからいただいてきたティッシュの箱をプレスルームのテーブル前に積んでおいたら、何人かのジャーナリストが鼻声で「もらっていいか」と何枚か持って行った。さらに風邪薬の代わりにと、ホテルの近所にあるマーケットで買った栄養ドリンクを「これはビタミン剤か? 売ってくれ」と咳き込みながら頼みに来た外国人ジャーナリストもいた。

17戦で行われる今年のF1の中で、肉体的にドライバーに厳しいサーキットが3つある。ひとつはガードレールに囲まれたモナコ。そして、真夏に開催されるハンガロリンク。そして、今回マレーシアGPが行われたセパン・インターナショナル・サーキットである。常夏のマレーシアはただ暑いだけでなく、ヨーロッパからやってくるドライバーやチームスタッフにとって、時差ぼけと季節ぼけを強いるサーキットでもある。体調管理が極めて難しいグランプリで、毎年何人かのドライバーが体調を崩す。赤道直下のマレーシアで行うグランプリというのは、テレビの画面を通して見ている以上に過酷なグランプリなのである。

だから、ドライバーたちが日曜日のレースで戦っていたのは、目の前を走るライバルたちだけでなく、暑さとも戦っていたのである。スタート直前にダミーグリッドへ行くと、多くのドライバーがコクピットに乗り込む直前までミネラルウォーターを口にしていた。レース中にも水分は補給できるが、レース前にしっかり水分を補給しておいたほうが身体にはやさしい。

時間をかけて補給するのは、一度に水分を補給しようとしても、身体が受け付けないためである。また、レース中にドリンクボトルが故障することだってないことはない。実際、完走したあるドライバーによれば、「本当にタフなレースだったよ。それはもう説明できないほど、きつかった。コクピットの中は蒸し風呂状態で汗だらけ。しかもレース中にドリンクが空になってしまったんだ」とコメントしている。

また、ほかのドライバーも「ドリンクボトルに積んであるミネラルウォーターを水として飲めたのは、最初の5~6周だけ。あとはまるで紅茶。だって、もう60℃ぐらいになっているんだからね。そうなると、飲みたくなくなるんだ。でも飲まないと終盤、身体がきつくなる」

そんな中で、2ポイントを獲得したヤルノ(写真)。そして、ポイント獲得はならなかったものの、右フロントタイヤの空気圧にトラブルを抱えながらも冷静に対処し、28周目に予定外のピットインを強いられたラルフ。ラルフのペースがその後上がらなかったのは、ここでチェッカーフラッグまで走りきるだけの燃料を積んだ(ほぼ満タン)ためだった。1回目のピットストップでミディアムタイヤを履いてからのヤルノのペースが、BMWザウバーのニック・ハイドフェルトと遜色ないものだったことを考えると、「ルノーにスタートで前に出られなければ、BMWザウバーと勝負できていたかも」というヤルノの言葉にも、うなづける。

「月曜日の午後2時にバーレーンへ飛んで、1日だけビーチで休暇を取るよ」と語ったヤルノ。ゆっくりと身体を休めて、木曜日にサーキットで会おう。

次回、GP Diaryは4月13日に更新の予定です。
お楽しみに。