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Rd.04 スペインGP

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15年ぶり

2007年5月11日

バーレーンGPから4週間。ようやくF1がヨーロッパで再開した。

ヨーロッパラウンドの開幕というと、サンマリノGPの舞台だったイモラを連想する方が多いと思う。1980年にグランプリの舞台としてF1のカレンダーに登場してきたイモラは、その翌年からサンマリノGPの舞台として、じつに25年間も春のF1を彩ってきたのだから、無理もない。しかし、今年はそのサンマリノGPの名が、F1のカレンダーから消滅した。

2000年以降、ヨーロッパラウンドのスタートは常にイモラで切られてきたのは、確かである。しかし、90年代には何度かイモラ以外で、ヨーロッパラウンドが開幕したことがある。近いところでは、96年のニュルブルクリンクで開催されたヨーロッパGP。肌寒いエイフェルの森でF1初勝利を挙げたのは、ジャック・ビルヌーブだった。93年にもイモラ以外でヨーロッパラウンドが開幕している。この年は凍り付くような雨が降っていた。イギリス・ドニントンパークで行われた伝説のウエットレースである。アイルトン・セナがスタート直後の1周目に4台をオーバーテイクするという離れ業で、観客を魅了した。

さらに例年なら、4月に開幕するはずのヨーロッパラウンドが、今年は5月にズレ込んでスタートすることとなった。イモラで命を落としたアイルトン・セナの命日が5月1日であることからも、ヨーロッパでシーズン最初のレースが5月に入ってから行われたのは、これが初めてではない(99年も5月2日が決勝だった)。しかし、初日(金曜日)が5月にズレ込んでスタートするのは、じつに92年以来、15年ぶりの椿事である。

このときのレースもまた、雨がらみのレースだった。舞台となったのは、今年と同じスペイン・カタロニア・サーキット。ナイジェル・マンセルが開幕4連勝を果たすのである。

今週末のカタロニア地方の天気は良好との予報で、初日も雲ひとつない快晴だった。伝説となるような好勝負が展開されるのか。あるいはF1初優勝者が表れるのか。カタロニア・サーキットは初日から6万7000人の観客で沸いている。

次回、GP Diaryは5月12日に更新の予定です。
お楽しみに。

信頼

2007年5月12日

5月11日、金曜日。午後2時からスタートしたフリー走行2回目の終盤、ロングラン走行をしながらタイヤの比較を行っていたラルフがピットインしてきた。セッションはまだ残っていたが、カーナンバー11はこの後ずっとガレージにとどまり、ラルフの走行はここでストップした。周回数は28周。チームメートのヤルノが42周したのだから、明らかに少ない周回数だった。

フリー走行後の取材で、その点を尋ねられた新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクターは、厳しい表彰でこう説明した。

「原因がなんだったのかは、すでに調査して解明できています。しかし、それがなんだったのかは、恥かしくてお答えすることができません」

ラルフのクルマにトラブルが発生したパナソニック・トヨタ・レーシングは、走行中のヤルノのクルマもピットインさせ、ラルフにトラブルが出た箇所を確認するという作業を行った。その場所は、リアサスペンションのサードダンパー。パナソニック・トヨタ・レーシングのファンの方なら、御存知のことと思うが、トヨタは昨年のアメリカGPとブラジルGPで2度、このサードダンパーのトラブルに見舞われている。しかも、最終戦ブラジルGPのトラブルの原因は、人為的なミスによるものだったから、悔いの残るシーズン最終戦だった。

今回のトラブルも、人為的なミスが原因だった。TMGでスペインGP用に車体を組み上げる際に、正しくない方法でサードダンパーが取り付けられていたことが原因だと見られている。サードダンパーは車高を調整する重要なパーツだけに、新居DTCの表情が険しかったのも当然といえば当然かもしれない。しかし、このトラブルがグランプリ初日に出たことは、不幸中の幸いでもある。アメリカGPでは予選の第1ピリオドでヤルノに発生。そのため、ヤルノはピットレーンからのスタートを強いられた。さらにブラジルGPではレース序盤に発生し、2台そろってリタイア。今回のトラブルは金曜日だった。

しかし、もうこれ以上のミスが許されないのも、事実。しっかりと戦って、自らの手で信頼を勝ち取ってほしい。

次回、GP Diaryは5月13日に更新の予定です。
お楽しみに。

進化

2007年5月13日

開幕戦から2カ月が経ったF1。バルセロナに姿を現したクルマはどれも新しいエアロダイナミクスに変身していた。パナソニック・トヨタ・レーシングのTF107も、1週間前の合同テストで新空力パーツを試し、今回のスペインGPは空力パッケージを一新してきた。

わかりやすい改良点は、チムニーの形状が変更された新しいエンジンカバーである(写真上)。以前までのものは、いわゆるチムニー(煙突)としてサイドポンツーン内の排熱を行うパーツとして存在していた。しかし、今回の変更でその排出口は完全に塞がれた。今後、真夏のグランプリに備えて、排出口は黒いカーボンの板で塞ぐという開閉可能な処理が施されているため、ちょっと見ただけだと、その違いがわかりづらい。しかし、気温約30℃、路面温度も50℃に達した土曜日のセッションで、TF107のチムニーは密閉されたまま。つまり、チムニーを完全にサイドポンツーン上面の空気の流れをコントロールする空力パーツとして使用しているわけである。

このほかにも、多くのチームが今回、変更を加えてきた空力パーツはフロアやバージボードなど、あまり目立たない小さな改良である。その中でも興味深かったのは、今年から義務づけられたリアウイングに付着されたセパレーターである。このセパレーターは、今年から2枚のフラップをぐるりと取り囲むように変更されたため、リアウイングのフラップの形状が決まってからでないと、セパレーターの製作ができなかった。そのため序盤戦では多くのチームが、ガーニーフラップのように、リアウイングに後付で付着するという方法で装着していた。

しかし、それではフラップとセパレーターの間にわずかな段差が発生してしまう。そして、進化したエアロダイナミクスマシンであるF1では、この段差によって発生する気流の乱れは無視できないほどの悪影響となる。そのため、多くのチームが、フラップとの段差をなくした一体成型のセパレーターを採用してきた。

クルマの総合力が問われるカタロニア・サーキット。第2の開幕戦に相応しい進化したクルマがスターティンググリッドに並んでいた。

次回、GP Diaryは5月14日に更新の予定です。
お楽しみに。

期待

2007年5月14日

「カタロニア・サーキットを走れば、クルマの調子がわかる」と言われている。高速から低速までバランスよくコーナーがレイアウトされているだけでなく、長いストレートもあり、エアロダイナミクス、車体バランス、メカニカルグリップなど、クルマの総合力が問われるからである。シーズン中だけでなく、オフシーズンもここでテストが繰り広げられるのは、一年を通して温暖な気候だからというだけでなく、コースがそんな特徴を持っているからでもあった。それゆえ、調子が悪いドライバーは、ここでクルマを走らせることを嫌がるとも言われている。

アジア・パシフィックラウンドを終えた段階で、パナソニック・トヨタ・レーシングの2人は、ヤルノが3戦中2度の入賞を果たし、ドライバーズ選手権で7番手と、開幕戦の入賞以来、足踏みが続いているラルフをリードしている。さらに予選でも、ヤルノは開幕から3戦連続でトップ10を獲得しているのに対して、ラルフはバーレーンで14番手に沈んだ。明らかにヤルノのほうが序盤戦は流れに乗っていた。

ところが、スペインGP直前の合同テストで、初日TF107を走らせたのはヤルノではなく、ラルフだった。チームはなかなか調子が出ないラルフに少しでも多く走る機会を与えて、TF107を乗りこなしてもらおうとした。2月のテストではリアタイヤの摩耗を抑えるためのセットアップを急ぎすぎてしまい、結果的にラルフにとって乗りやすいクルマに仕上がっていなかったのである。

開幕3戦を終え、リアタイヤの摩耗に関しては、チームはひとまず解決の糸口を見いだした。そこで、今度はラルフが乗りやすいクルマになるように、さまざまなトライをテストで行い始めたのである。

「私がマレーシアとバーレーンで、路面グリップが低い状況でのフロントの挙動に問題を抱えていたことは確かである。そのため、スペインGPに向けて、今回のテストではそれを改善することが最大の目的だった。非常に多くのセットアップ変更を試した結果、私はTF107をいままで以上にスムーズに操縦することができるようになった。これは私にとって助けとなり、問題は解決したように思う。もちろん、今日のテストの成果がどれだけのものかは、来週のレースを待たなくてはならないが、私は結果を楽しみにしている」

クリアラップがうまく取れずに、17番手に終わった予選。第1ピリオドで13番手だったヤルノとの差は0.16秒。順位ほど悲観する走りではなかった。さらにレースではスタート直後の10コーナーで他車の追突に遭い、緊急ピットイン。レースは終わったかに思えた。しかし、ピットインしたラルフは、ダメージを負ったタイヤを交換すると同時に、1回目のピットストップを伸ばすために燃料を追加してコースに復帰。あきらめずに前を追い始めるのである(写真右)。追突の際にリアウイングの翌端板にもダメージを負い、クルマのバランスは必ずしも良くなかったはずだ。それでもラルフが走り続けたのは、「テストの成果がどれだけのものか、結果を楽しみにしていた」からではないだろうか。

結果は残念だったが、最終的にリタイアを決断するまで、ラルフの走りをコースで見ていたボクは、ラルフがバルセロナで1周でも多くの走行を試みていたことがうれしかった。結果は、また次の楽しみにするとしよう。

次回、GP Diaryは5月18日に更新の予定です。
お楽しみに。

春秋

2007年5月18日

22台中、じつに8台ものクルマがリタイアに終わった第4戦スペインGP。完走台数14台。率にすると約63%。昨年のレースで、この数字を下回ったのは、6回ある。マレーシアGP(完走14台)、オーストラリアGP(完走13台)、ヨーロッパGP(13台)、アメリカGP(完走9台)、ドイツGP(完走12台)、ハンガリーGP(完走13台)だ。これをヨーロッパラウンド以降に限定すると4回となり、さらにドライコンディションに限ると、3回になる。そして、スタート直後の1コーナーで大きなアクシデントが発生するという特別なケースを除くと、2回だけとなる。パナソニック・トヨタ・レーシングの2台がリタイアに終わった先日のスペインGPの決勝レースは、そういう意味ではかなり稀な展開だったといえる。

このような結果となった背景には、今年のヨーロッパラウンド開幕が、アジア・オセアニアラウンドから4週間空いていたことが少なからず影響していたと考えられる。ほとんどのチームがエアロダイナミクスパッケージを変更してきただけでなく、戦闘力を上げようとギアボックスなど車体のあらゆる部分を見直してきた。チームによっては、開幕戦とはまったく違ったクルマに変身しているところもあり、まるでスペインGPが今シーズンの開幕戦であるかのように、各チームのクルマはリニューアルされていたのである。こうした改良が結果的に信頼性を損ない、完走率の低いサバイバルレースを演出した可能性は充分考えられる。

もうひとつ、スペインGPで興味深かったのは、スタート直後の混乱時と、周回遅れになる場面以外で、基本的にオーバーテイクが見られなかったことだ。今年のスペインGPが行われたカタロニア・サーキットは、冬季に最終コーナー手前が改修され、シケインが設けられた。メインストレート手前に低速セクションができたことで、立ち上がり方によっては、続くストレートでの伸びに大きな差が生まれ、これまでよりも多くのオーバーテイクシーンが見られると期待したが、結局ボクが見たオーバーテイクシーンは、スタート前にエンストしてピットレーンからスタートしたヤルノが、レース序盤にスパイカーを抜いたシーンだけだった(写真左)。

これは、最終コーナーの脱出スピードが、昨年までとほとんど変わらなかったからで、パナソニック・トヨタ・レーシングの新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクターも、「予想していたよりも、最終コーナーの通過スピードが上がっていて驚いた」という。昨年までの最終コーナーはひとつ手前も同じような右の高速コーナーだったため、最終の高速コーナーでは少しアクセルを戻しながら脱出していたが、今年はシケインを立ち上がった後、最終コーナーは全開で抜けていくため、通過スピードという点ではほとんど変わらなかったらしい。さらにカタロニア・サーキットの1コーナーは中高速のS字カーブとなっているため、ブレーキング競争になりにくかったこともオーバーテイクを演出できない理由になっていると説くドライバーもいた。

そんなカタロニア・サーキットでレースを見ていて脳裏に浮かんだのが、富士スピードウェイである。富士スピードウェイも以前は最終コーナーが高速コーナーだったが、改修によって約1.5kmあるストレートの手前に低速セクションが設けられた。これでは、今年のスペインGP同様、富士スピードウェイでもオーバーテイクシーンが見られないのではないかと不安になったからだ。ただし、そんな心配は杞憂に終わった。ある関係者によれば、富士スピードウェイの場合、「1コーナーがカタロニア・サーキットと完全に異なる形状をしており、カタロニア・サーキットよりはブレーキング競争が見られるのではないか」というのである。

サバイバルレースもドラマチックでいいが、秋の富士スピードウェイでは、コース上で何度もオーバーテイクシーンが見られるレースが展開されてほしいものである。

次回、GP Diaryは5月24日に更新の予定です。
お楽しみに。