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Rd.11 ハンガリーGP

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雲行き

2007年8月3日

前戦ヨーロッパGPから帰国する飛行機の中で、「猛暑による死者がハンガリーで多数出ている」という報道を新聞で読んだ。最高気温が40℃以上に達したというから、かなりの暑さである。ハンガリーGPは一年でもっとも暑いグランプリのひとつ。しかも、直前にそんな報道を読めば、これはもう暑さ対策で頭がいっばいで、スーツケースを短パン、Tシャツでいっぱいにして水曜日にハンガリーへと出発した。

ところが、深夜11時にブダペスト空港に到着したら、寒いのである。その日は、「まあ夜だから、多少気温が低く感じるのかな」と思って床に就いたのだが、翌朝も寒くて目覚ましが鳴る前に目が覚めた。ホテルのスタッフに聞くと、1週間前は確かに暑かったが、今週は寒冷前線が近づいていることもあって、涼しい日が続いているという。

地元の天気予報では、金曜日はそれでも最高気温が30℃まで達するだろうが、土曜日は25℃、日曜日の午後も26℃ぐらいまでしか上がらないと予測している。加えて、真夏とは思えない低い湿度(30%台)も手伝って、今年のハンガリーGPは例年に比べて、かなり涼しい気候の中でスタートした。

気になる週末の天気予報は、初日は晴れのち曇りというコンディション。そして、土曜日は晴れ。日曜日時折雲が出るものの、基本的には晴れと予想されている。ただし、前線がどのように発達し、さらに進路をどのようにとるのかで、雲行きは変わる可能性があるという。金曜日も午前中は晴れていたが、午後のセッションで小雨がパラつくというトリッキーなコンディションとなった。

昨年も雨で波乱のグランプリとなったハンガリーGP。今年も、初日にルイス・ハミルトンがスピンを喫してストップ。フェリペ・マッサもスピンアウトするシーンが見られた。大雨のニュルブルクリンクから2週間、今週も波乱含みでグランプリがスタートした。

次回、GP Diaryは8月4日に更新の予定です。
お楽しみに。

中嶋

2007年8月4日

今回、ハンガロリンクに来て、気がついたことがある。テストドライバーのフランク・モンタニーがいないのである。チーム関係者に聞くと「サッカーのプレー中に足に切り傷を負い、今回はチームと帯同せずにフランスで静養中」とのことだった。

そこで気になるのが、チームのリザーブドライバー体制である。レギュラードライバーに何かトラブルが発生した場合に備えて、ほとんどのチームはリザーブドライバーをレースに帯同させ、いかなるときでも2台体制でレースが行えるよう準備している。昨年までその役目を果たしていたのはリカルド・ゾンタで、今年それを担当しているのがフランク・モンタニーだった。

そして、ハンガリーGPでパナソニック・トヨタ・レーシングのリザーブドライバーとして登録されたのが、中嶋一貴だった。幸いパナソニック・トヨタ・レーシングの2人のレギュラードライバーにアクシデントが発生しなかったため、中嶋がレギュラードライバーに代わってフリー走行や予選を走ることはなく、サポートレースとしてハンガロリンクで併催されているGP2シリーズに専念することができた。

それが、どれくらい中嶋にとってアドバンテージとなったかはわからないが、イギリスラウンド、ドイツラウンドと2グランプリ4レースで連続して表彰台に上がっている中嶋は、このハンガロリンクの第1レースでも表彰台を獲得。しかも、それまで4回続けて上がっていた3位の壇ではなく、ひとつ上の2位へとステップアップした。

この日、パドックには父親の悟さんの姿があった。最高のプレゼントとなったことだろう。

次回、GP Diaryは8月5日に更新の予定です。
お楽しみに。

5番手降格

2007年8月5日

プレスルームには閉館時間が定められている。木曜日は夜10時で、金曜と土曜は夜11時、そして日曜日は最後のジャーナリストが帰るまでとなっている。だから、土曜日は夜11時になると、「もう閉めますから、お帰り下さい」と締め出しを食うのだが、8月4日は夜11時50分になっても、まだ30人以上のジャーナリストが残っていた。もちろん、プレスルームのスタッフはだれもボクたちを締め出そうとはしなかった。むしろ夜10時ごろには、パプリカチキンの夜食を差し出すサービスぶり。なぜなら、今回ハンガリーGPのレース審議委員会が、予選後にフロントロウを独占したチームに対して、審議を開始していたからである。

審議は最後のアタックで逆転でポールポジションを獲得したアロンソ(写真上/ハンガロリンクにあるアロンソの銅像)が、2位となったチームメートのハミルトンのアタックを妨害したからではないかというものから始まった。タイヤ交換を済ませたアロンソが、なかなかピットアウトせず、その後ろでハミルトンが長い時間停止を余儀なくされた。そのため、ハミルトンはピットアウトしてアタックラップに入ろうとしたものの、コントロールラインを通過する直前にチェッカーフラッグが振られ、アタックできないまま、アロンソの逆転を許したのである。手元の資料から計算すると、それは1秒前だったと推測される。

しかし、テレビカメラでチーム代表のロン・デニスが怒っていたのは、アロンソに対してではなく、ハミルトンへだった。予選後の会見でその理由をデニス代表は「最終ピリオドでコースインする際、ハミルトンに続いて2番目にコースインしたアロンソのほうが燃料搭載量の多いので、ハミルトンにアロンソを先に出すように指示したのだが無視され、われわれの計画がメチャクチャになったから」と説明した。そして、アロンソのフィジオ(フィジカルトレーナー)を連れて「私はハミルトンと話をするから、キミはアロンソを鎮めてほしい」とパルクフェルメへ行ったのである。つまり、チーム内のちょっとしたトラブルで、最終アタックに関して、故意の妨害はなかったと説明したのである。

そして、午後10時30分に公式予選結果が発表され、トップ10の順位に変更はなかった。

ところが、それから1時間20分後の午後11時50分に、レース審議委員会がまったく異なる解釈で、審議の結果を発表した(写真上/結果を配布するプレスルームのスタッフ)。それは、「アロンソが最後のピットストップに要した30秒のうち、20秒は必要と認定されるが、あとの10秒は不必要だった」というものだった。そして、「アロンソの5番手降格」と「マクラーレンのハンガリーGPでのコンストラクターズポイント剥奪」という重い処分を下すのだった。つまり、予選6番手のラルフは5番手からスタートすることとなった。

また、この裁定から5分後の23時55分に予選第1ピリオドで、他者のアタックを 妨害したしたとして、予選8番手のジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)に対 しても5番手降格のペナルティが下され、予選9位に終わっていたヤルノのスタ ートポジションは現時点で8番手が予定されている。

予選でさまざまな波乱が起きたハンガリーGP。3日目の日曜日は、果たしてど んな結末を迎えるのだろうか。もう、時計の針は土曜日の夜の12時を回った。

次回、GP Diaryは8月6日に更新の予定です。
お楽しみに。

進化

2007年8月6日

前戦ヨーロッパGPが終わった後、ボクはすぐに日本に帰らず、しばらくドイツにいた。ある取材で、TMGに行かなければならなかったからだ。そこで、エアロダイナミクス担当のエンジニアから風洞施設の中で話を聞く機会があった。目的の取材を終えた後、しばらくボクは彼と雑談していた。ちょうどそこには1/2スケールのモデルカーがあった。そして、そのモデルカーを見ながら、彼は今年のTF107のエアロダイナミクスについて、こうつぶやいたのである。

「ウチのエアロダイナミクスは、そんなに悪くないと思うんですよね」

誤解しないでほしいのは、現在の成績にもちろん、彼は満足していなかったということだ。悲願の一勝を誓って臨んだ6年目のシーズンで、いまだに勝利から見放されている現状に喜んでいるスタッフは、TMGに誰一人としていないことは確かである。しかし、それは今年のクルマが失敗作だったということとイコールではない。

例えば昨年、パナソニック・トヨタ・レーシングがシーズン中に目標に掲げた相手はチャンピオンチームのルノーだった。予選では何度かルノーの前に出たこともあったが、結局彼らに追いつくことはできなかった。しかし、チャンピオンマシンのR26をベースに開発された今年のR27を、TF107は予選と決勝レースで何度も凌駕し、今回のハンガリーGPのレースでもラルフは2台のルノーに先着している。つまり、昨シーズン終了後から今シーズンの開幕までに、パナソニック・トヨタ・レーシングは昨年のチャンピオンチームをしのぐ進化を見せたのである。

ところが、上には上がいた。マクラーレンとフェラーリである。彼らはトヨタを大きく上回る目標を設定し、今シーズン完全に頭ひとつ抜け出した形でタイトル争いを演じている。もちろん、現在のトヨタのターゲットは、ドライバーとコンストラクターの両選手権でトップを走るマクラーレンである。

「目標の設定がやや甘かったと言われても仕方ありません。でも、TF107は決して失敗作じゃない。今後、進化するスピードを加速させれば、必ずやトップ争いを演じられるクルマとなるポテンシャルを秘めています」

ハンガリーGPの予選第2ピリオドでヤルノが見せたパフォーマンスは、それを証明するような走りだったし、日曜日のレースで終盤までマクラーレンのフェルナンド・アロンソの猛追を抑えきって、最終的に抜かれはしたものの6番手を獲得したラルフの走りは、今後の活躍を期待せざるを得ない素晴らしいものだった。次戦トルコGPまでの2週間の夏休みが長く感じる、真夏のハンガリーGPだった。

次回、GP Diaryは8月10に更新の予定です。
お楽しみに。

ラベル

2007年8月10日

ハンガロリンクのパナソニック・トヨタ・レーシングのガレージ前で興味深いものを発見した。それは、緑色のラベルが貼られたタイヤウォーマーである。
これまでパナソニック・トヨタ・レーシングのタイヤウォーマーには、黄色と赤色の2種類があった。黄色がラルフで、赤色がヤルノだった。それぞれのラベルにはタイヤの表面のパターンがイラストで描かれていて、さらにその上にタイヤの種類を表す文字がアルファベット3文字で印刷されていた。ドライは「DRY」、スタンダードウエット(浅溝)タイヤは「INT」、エクストリームウェザー(深溝)タイヤは「WET」という具合だ。このやり方は2002年の参戦当初に、ピットストップ作業のタイヤ交換で何度も混乱したことから、チーム内で検討し導入された。

しかし、第10戦ヨーロッパGPでパナソニック・トヨタ・レーシングは、ピットストップ作業で大混乱。レース後、ガレージ内に取り付けていたビデオカメラをファクトリーに帰ってから解析し、チームスタッフの動きを観察した結果、あることに気がつくのである。参戦当初のミスは、マクニッシュがピットインしたときにチームメートのサロのタイヤを持ってくるというものだった。そのため、チームはタイヤウォーマーにドライバーごとに色の違うラベルを貼ることで、同じ失敗は繰り返さない工夫をした。

ところが、ニュルブルクリンクでチームが陥った混乱は、ドライバー間のタイヤを取り違えるというものではなく、晴れ用タイヤと雨用タイヤを混同したのである。現在ではレース用のタイヤは、レース前にすでにドライバーごとに分けて、整理されてガレージ内に置かれている。つまり、ラルフがピットインしようとするタイミングで、メカニックがガレージからタイヤを持ってくるとき、ヤルノのタイヤを運ぶことはまずないのである。むしろ、ドライタイヤと2種類のウエットタイヤがドライバーごとに集められて保管されているため、ドライタイヤとウエットタイヤで見間違える可能性のほうが高かった。しかし、最近のレースはほとんど晴れ。最後のウエットレースは、昨年の中国GPだった。しかも、そのときの雨はレース前から降っていたので、ウエットタイヤの準備に関して慌てる必要はなかった。

その油断が、ニュルブルクリンクでミスにつながった。

そこでチームは、ハンガリーGPからタイヤの識別方法を変えた。ドライバーごとに色を分けるのではなく、タイヤの種類ごとに色を分けたのだ。ドライは緑色(写真下左)、スタンダードウエットは黄色、エクストリームウェザーは赤色となった(写真下右)。

もちろん、今後もミスは犯すかもしれない。人間が作業する限り、ミスを完全になくすことはできないからだ。それでも、ヨーロッパGP後になんとか改善しようという気持ちがパナソニック・トヨタ・レーシングにあったことは確かである。

次回、GP Diaryは8月24日に更新の予定です。
お楽しみに。