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Rd.12 トルコGP

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チャレンジング

2007年8月24日

1年ぶりにイスタンブール・パーク・サーキットに帰ってきて、あらためてこのサーキットがチャレンジングであることを確認した。ボクの記憶が正しければ、1セッションでこれだけのコースオフとスピン、そしてショートカットが続出したセッションは見たことがない。以下がフリー走行1回目でのアクシデントである。

10時24分/ヤルノ・トゥルーリが最終コーナーでスピン
10時34分/14コーナーで山本左近スピン
10時34分/10コーナーでジャンカルロ・フィジケラがコースオフ
10時39分/8コーナーでヘイキ・コバライネンがコースオフ
10時40分/10コーナーでキミ・ライコネンがコースオフ
10時42分/8コーナーでフェリペ・マッサがコースオフ
10時49分/1コーナーでエイドリアン・スーティルがコースオフ
10時53分/10コーナーでニコ・ロズベルグがコースオフ
10時54分/1コーナーでラルフ・シューマッハがコースオフ
10時58分/14コーナーでマーク・ウェバーがスピン
10時59分/1コーナーでフェリペ・マッサがコースオフ
11時00分/10コーナーでロバート・クビカがコースオフ
11時04分/10コーナーでロバート・クビカがコースオフ
11時04分/1コーナーでヘイキ・コバライネンがコースオフ
11時09分/1コーナーでニック・ハイドフェルトがコースオフ
11時10分/10コーナーのシケインをヘイキ・コバライネンがショートカット
11時11分/10コーナーのシケインをエイドリアン・スーティルがショートカット
11時13分/10コーナーのシケインをセバスチャン・フェッテルがショートカット
11時13分/1コーナーで山本左近がコースオフ
11時13分/1コーナーでロバート・クビカがコースオフ
11時15分/3コーナーで山本左近がコースオフ
11時18分/10コーナーのシケインをジェンソン・バトンがショートカット
11時18分/10コーナーで佐藤琢磨がコースオフ
11時22分/10コーナーのシケインをエイドリアン・スーティルがショートカット
11時24分/10コーナーでヤルノ・トゥルーリがコースオフ
11時27分/4コーナーでラルフ・シューマッハがスピン
11時27分/1コーナーでエイドリアン・スーティルがコースオフ
11時28分/1コーナーでマーク・ウェバーがコースオフ
11時28分/8コーナーでセバスチャン・フェッテルがコースオフ
11時31分/1コーナーでデビッド・クルサードがスピン
11時32分/5コーナーでデビッド・クルサードがストップ

最後のクルサードのアクシデントは、スピンした直後に右のサイドポンツーン後部から出火し、直後にクルマをコース上で停止させていることから、なんらかのメカニカルトラブルが発生したと思われる。しかし、それ以外はドライビングエラーである。いくらまだクルマのセットアップが決まっていない最初のセッションとはいえ、F1ドライバーがこれだけミスを繰り返したセッションも珍しい。

このような状況の中、パナソニック・トヨタ・レーシングの2台はラルフが7番手、ヤルノも10番手とまずまずのスタートを切っている。

次回、GP Diaryは8月25日に更新の予定です。
お楽しみに。

スラントノーズ

2007年8月25日

金曜日の夕方4時半、パナソニック・トヨタ・レーシングに朗報が入ってきた。それはフリー走行2回目で3番手にラルフが入り、ヤルノも4番手につけたということではない。クラッシュテストが行われていたドイツから、「試験に合格した」という知らせが入ってきたのである。

クラッシュテストを受けたのは、新しいノーズだった(写真上左)。ノーズはクラッシャブルストラクチャー(衝撃吸収材)を兼ねるパーツであるため、デザインを変更する場合、クラッシュテストをやり直さなければならない。24時間365日体制で風洞実験を行い、なんとかトルコGPに間に合った新しいノーズと新フロントウイングだが、FIAのスタッフが立ち会って行われるクラッシュテストは、365日いつでも試験が行われるというわけではない。なんとかスケジュールの都合がついたのが、トルコGP初日の午後3時半だった。

そのため、パナソニック・トヨタ・レーシングは初日のフリー走行は従来型のフロントウイングとノーズ(写真上右)で走行し、新ノーズの採用は土曜日午前中に予定。しかも、それはレース投入ではなく、あくまで今後のデータ取りのためという位置づけで装着させる予定にしていた。ところが、金曜日午後のフリー走行2回目で赤旗が出されて約28分間の中断があったため、「クラッシュテスト合格」の朗報を受け取ったものの、チームは手放しでは喜べない状況となった。なぜなら、土曜日午前中フリー走行3回目は、予選とレースに向けた最終的なセットアップを煮詰めていくため、それでなくとも忙しいセッションとなり、とてもデータ取りのための走行を行う余裕がないと考えたからだった。

しかし、土曜日の午前11時からスタートしたフリー走行で、パナソニック・トヨタ・レーシングは2台に新しいノーズを装着(写真下)。インスタレーションラップだけにとどまらず、ラルフは20周のうち15周を、ヤルノも21周中17周を新ノーズを装着して走行するのである。

「われわれは最後まで開発をあきらめません。そして、富士スピードウェイで開催される日本GPでは、今シーズンの集大成をお見せできると思います。その第一歩が、今日投入した少し前方に傾斜した(スラント)ノーズです」

トルコGPで結果を出すだけなら、金曜日の走行データが揃っている従来型のノーズのほうが確実である。しかし、彼らはあえて困難な道を選択した。なぜなら、それが富士へとつながる道だからだ。

次回、GP Diaryは8月26日に更新の予定です。
お楽しみに。

100戦目

2007年8月26日

昨日のGP Diaryの文末で「彼らはあえて困難な道を選択した」と書いた。しかし、予選後に新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクターに、なぜ新ノーズ&フロントウイングを採用したのかをうかがったら、異なる答えが返ってきたので、訂正したい。

新居DTCによれば、土曜日午前中のフリー走行3回目に臨むにあたって、パナソニック・トヨタ・レーシングはまず新しいノーズ&フロントウイングと従来型のノーズ&フロントウイングで、1周ずつ走行することを決めていたという。もちろんそれは、2種類の比較テストである。パフォーマンスは風洞実験で試し、データ的に向上していることはわかっているが、そこで得られたデータが必ずしも実走で再現されるとは限らない。最終的にはドライバーのフィーリングと、実走で得られた走行データの結果を見て、採用するかどうかの判断を行うのが常である。

しかし今回は既報どおり、クラッシュテストがトルコGP初日の午後に行われたため、事前のテストで実走確認ができなかった。そのため、土曜日のフリー走行でぶっつけ本番のテストを行うしかなかったのである。したがって、もし走行してみて何か不具合があれば、すぐに土曜日のフリー走行は従来型のノーズ&フロントウイングに切り替えて、予選に向けたセットアップを行うことになっていた。

ところが、ラルフとヤルノがともに「しっかりダウンフォースが増しているという手応えを感じる」と、好評価を下したのだ。さらに走行データを解析しても、従来型よりも確実にパフォーマンスが向上していることが確認できた。そのためチームは、新しい空力パッケージでトルコGPを戦うことを決定したのだ。

しかし、予選は期待していたパフォーマンスを出すことができなかった。ラルフはハードタイヤを履いた1回目のアタックでリアタイヤがロックするという症状に見舞われてしまう。しかし、これはメカニカルな問題ではなく、9コーナーでの追い風が起因していたのではないかと考えられる。いずれにしても、ピットに帰ってきたラルフは、ミディアムタイヤ(ソフト側)を履いた2回目のアタックに向けてフロントウイングを調整する。これは午前中のフリー走行でミディアムを履くと、リアタイヤのグリップ力が増してアンダーステア傾向に変化することがわかっていたからだ。

ところが、ミディアムを履いて出て行ったラルフは、まったく反対の症状であるオーバーステアに見舞われてしまう。低速サーキットであればオーバーステアのマシンのほうが扱いやすいが、イスタンブールのように高速コーナーがあるサーキットでオーバーステアが出ると、ドライバーは安心してアクセルを踏めない。イスタンブール名物の8コーナーは、土曜日のラルフには「魔の8コーナー」となっていたに違いない。

チームメートのヤルノもブレーキング時に不安定になるという問題を抱えて、不本意な9番手に終わった。それが新ノーズ&フロントウイングに起因していたのかどうかはわからないが、新ノーズ&フロントウイングのパフォーマンスを100%サーキットで出し切れるまでには、エンジニアたちが使いこなせていないことは事実である。

「彼らはあえて困難な道を選択した」わけではなかったが、結果的に困難な道を進むことになったわけだ。しかし昨日も書いたように、それは「富士へとつながる道」である。パナソニック・トヨタ・レーシングは日曜日、参戦100戦目のスタートを切る。しかし、チームはイスタンブールでいっさいメモリアルイベントは行わなかった。それはまるで「すべては富士へ」と集中しているかのようだった。

次回、GP Diaryは8月27日に更新の予定です。
お楽しみに。

晩夏

2007年8月27日

スタートから1時間26分後にチェッカーフラッグが振られたときには、カメラマンジャケットのサイドポケットに入れておいたミネラルウォーターは2本とも空になっていた。05年にF1が開催されたトルコGPは、今年が3回目。サーキットのコース脇を周回してカメラマンを運ぶシャトルバスの往来がヨーロッパの各グランプリに比べて少なく、水分補給をいつものグランプリよりも必要としたからだった。それでも、ボクはイスタンブール・パーク・サーキットが好きだ。それは、このサーキットが自然の地形を生かして起伏に富んでいるばかりでなく、名物の8コーナーに代表されるようにチャレンジングなコーナーがいくつもあるからだ(写真上)。

しかも、イスタンブール・パーク・サーキットは路面がスムーズなため、どのクルマも車高を低く設定する。だから、少しでも路面にバンプがあると、激しくフロアをアスファルトに擦りつけ、ディフューザーから煙のような粉をまき散らす。80年代から90年代にかけて見られたような、火花を散らすわけではないが、スキッドブロックを擦りつけながら、高速コーナーを抜けていく姿は、最近ではなかなか見られなくなった。そういう意味では、ヘルマン・ティルケは、素晴らしい仕事をしたと思う。

そのイスタンブール・パーク・サーキットで、2台のパナソニック・トヨタ・レーシングのドライバーは、苦しみながらも攻めていた。ラルフは予選での失敗から、1ストップ作戦を敷いたものの、軽い燃料で走行している2ストップ勢を何度も追い回した(写真下左)。レースにおけるリザルトもレース中のファステストラップ順位も12位に終わったが、重量差を考えると、あとコンマ3秒以上は速いペースで走行できていたと思う。予選ポジションさえよければ、ハンドリングに悩んでいたロバート・クビカ(BMWザウバー)と、8番手からスタートして7位に入賞したニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)を上回る成績を残していたことだろう。

これはスタート直後にジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)に追突され(写真下右)、いきなり最後尾からの追い上げを強いられたヤルノについても同じだ。ヤルノは2ストップ作戦を敷いていた。しかも、1回目のピットストップが20周目と、ひとつ前のグリッドからスタートしたロズベルグ(17周目)を1回目のピットストップ後に逆転できる燃料を搭載して予選を戦い、日曜日のレースをスタートしていた。それだけに、スタート直後のアクシデントが非常に悔やまれる。

残念な結果に終わったパナソニック・トヨタ・レーシングだが、車体の空力性能が問われるイスタンブール・バーク・サーキットで、ラルフとヤルノが土曜日の午前中だけでなく、レースディスタンスを通じて新パッケージとなったTF107について高評価を与えていたことは、5戦残されている終盤戦に向けて、力強い結果だった。

夏は終わった。実りの秋に期待したい。

次回、GP Diaryは8月31日に更新の予定です。
お楽しみに。

チームオーダー

2007年8月31日

フェラーリはチームオーダーを採用すべきだ――これは、トルコGPでよく耳にした言葉である。現在では、レース中にチームが2人のドライバーの順位を故意に変えるという「チームオーダー」はレギュレーションで禁止されている。前述の言葉は、それに触れない程度に、2人のドライバーに優劣を付けて、一方のドライバーの勝利の可能性を高めるべきだという主張である。

トルコGPが始まる前の時点でのドライバーズポイントは、トップのルイス・ハミルトン(マクラーレン)は80点、2位のフェルナンド・アロンソが73点であるのに対して、フェラーリ勢の2人は3位のキミ・ライコネンが60点、4位のフェリペ・マッサは59点と、トップから20点差以上離されていた。トルコGPを含めて、残りは6戦。すべてフェラーリが1-2フィニッシュを飾っても、その勝利をマッサとライコネンで分け合い、ハミルトンが3位に入り続ければ、ドライバーズポイントでフェラーリ勢はハミルトンを逆転できない。だから、フェラーリがドライバーズタイトルを勝ち取りたいのであれば、トルコGPからどちらか一方のドライバーを優先させるべきだというのが、そういった主張を行う人たちの論理である。

そして、トルコGPが始まる前の時点で、優先させるべきドライバーは1点リードしているライコネンだというのが、大方の見方だった。木曜日の共同記者会見ではデビッド・クルサード(レッドブル)が、次のようにコメントしている。

「ハンガリーGPの予選第2ピリオドで、フェラーリはフェリペのアタック時に燃料を給油し忘れるという失態を演じたよね。それって、キミに有利な状況を作るために、意図的にフェリペのクルマに燃料を積まなかったと考えるのは、少し乱暴かな。でも、冷静に考えてみてよ。フェラーリのようなトップチームが燃料を積み忘れてピットアウトさせるなんて、おかしいよね。どちらか一方のドライバーがひいきされていると見られても仕方がないことさ」

もちろん机上の計算では、どちらか一方のドライバーを優先させたほうがタイトル争いは有利に運ぶだろう。昨年引退したミハエル・シューマッハが、7冠ものタイトルを獲得できた要因のひとつにも、そういったチームの方針があったことは事実である。しかし、モータースポーツは机上の計算だけで栄光がつかめる戦いではない。ファクトリーのスタッフが徹夜で開発したクルマを、現場スタッフが家族との時間を犠牲にしてサーキットでセットアップし、ドライバーは生死を賭けてドライブする。そこには強い絆があり、尊い夢がある。M・シューマッハが可能だったからといって、その手法がほかのドライバーで成立するとは限らない。

そして、そういった主張が、01年と02年のオーストリアGPでM・シューマッハとフェラーリのチームオーダーを批判し、マクラーレンのお家騒動を報じているメディアから出ていることにも驚いている。M・シューマッハが行ったときは、それ(チームオーダー)を非難した者が、タイトル争いが混沌となるのであれば、それを許すのか。

マッサが優勝したイスタンブールで、今度は「フェラーリはマッサを優先させるべき」という声が高まった。フェラーリがどのような戦略を採るのかは、フェラーリが決めることであり、そこに正否はない。重要なことは、ドライバーとスタッフがその決定に納得するかどうかである。それがないままタイトルを追うと、必ずそこに軋轢が生じてきたことは歴史が物語っている。

どのような結論が下され、ドライバーがどう従うのか。伝統の一戦、イタリアGPは重要な一戦となることだろう。

次回、GP Diaryは9月6日に更新の予定です。
お楽しみに。