2年ぶり
2007年9月13日
道を間違えてしまった。イタリアGP後、しばらくモンツァにとどまって、水曜日にベルギーGPが行われるスパへの移動を開始した。フランクフルトからレンタカーを飛ばして、コブレンツ、ケルン、アーヘン、ヴェルヴィエールを通過したまでは良かった。その先、ホテルへの出口で、ミスってしまった。うっかり「Spa」で降りてしまったのである。スパに行くんだから、「Spa」でいいんじゃないかと思う方もいるだろう。ところが、スパは「Spa」にあらず。
ボクたちはついスパと呼ぶが、サーキットがあるのは、スパ市の中心から9km離れたフランコルシャン村である。このサーキットが「スパ-フランコルシャン」と呼ばれるのは、そのためだ。
サーキットに着いたら着いたで、駐車場への入口は間違えるし、サーキットからの帰り道も交差点で何度も迷ってしまった。人間というか自分の記憶というのが、いかにいい加減なものかを思い知らされ、来年のドイツGPが開催されるホッケンハイムリンクへの道や、09年から開始される日本GPの隔年開催できちんとサーキットへ到着できるか不安になる今日この頃である。
とはいえ、スパ-フランコルシャンに来てみて感じることは、月並みな言葉で恐縮だが、やっぱり「素晴らしい」ということである。オー・ルージュ(写真右)などコースがチャレンジングなだけでなく、フランコルシャン周辺の雰囲気がいい。ここはF1以外にも「スパ24時間」など、さまざまなレースが開催されるレース村。グランプリ期間中は、村全体がサーキットと化したかのように華やかになる。
かつて、ワールドチャンピオンに輝いたこともあるニキ・ラウダは、「もし子供がレーサーになりたいと言ったら、スパに連れていきなさい。オー・ルージュを見れば、あきらめるだろう」と語ったという。そして、ボクは言う。「海外でF1を観たいけれど、どのグランプリへ行ったらいいか迷ったら、スパへ行きなさい。F1の素晴らしさを強く感じることができるだろう」
2年ぶりに、それを感じた。
次回、GP Diaryは9月14日に更新の予定です。
お楽しみに。
変わらないもの
2007年9月14日
人間、2年もあれば、結構変わるものである。2年前ボクは85kgあったが、いまは78kg。体脂肪率は下がったものの、頭にも白いものが目立つようになり、2年前にオー・ルージュを駆け上がり、夕闇のスパ-フランコルシャンを1周した元気はなくなった。四十を過ぎると、2年という月日は、それくらい長く感じるものである。
しかも今回、スパ-フランコルシャンは、コースの一部とピットビルディング、そしてパドックエリアを改修してきたので、訪れた人は年齢に関係なく、かなり変わったと感じたはずだ。
コースレイアウト的にもっとも大きな改修は、バスストップシケインが姿を消し、ヘアピンが2つ連続するような入り組んだシケインとなったことだ(写真上左)。そのほか、ホームストレートも幅員が広がったし、1コーナーのラ・ソースを過ぎたアウト側にあった排水溝はなくなり、その代わりに縁石と人工芝が設置された(写真上右)。以前は排水溝の外側のランオフエリアをコースの一部として使用できたが、今年はもう、そのようなラインを取るドライバーはいなくなった。
ボクたちメディアにとって、今回の改修でもっとも大きな変更点は、メディアセンターがピットビルディングの上に引越したことである(写真上)。これまでは1コーナーを立ち上がった先のイン側にある第2ピットビルディングの上にあり、取材するのにかなり急な坂と階段を上り下りしていたが、今年はほかのサーキットとほとんど同じように、ピットレーンにもパドックにも素早く行けるようになったので、取材が楽になった。
ただし、だからといって取材を効率的に行えず、素晴らしい原稿に結びつかないところは、2年前と変わらない。そして、今回の改修されて新しくなったスパ-フランコルシャンが、いまもドライバーにとってチャレンジングなコースであることも、2年前と同じなのである。
次回、GP Diaryは9月15日に更新の予定です。
お楽しみに。
スタート
2007年9月15日
スパ-フランコルシャンは、ピットレーン出口が鋭角なヘアピンカーブとなっている。そのため、ほかのサーキットで行われているピットレーン出口付近でのスタート練習ができない。だから、フリー走行後にホームストレートのグリッド上で、例外的にスタートの練習が認められている(写真上)。確かモナコも同じ理由で、毎年フリー走行後にグリッド上でスタート練習を行っていた。
スタートといえば、モンツァのパナソニック・トヨタ・レーシングを思い出す。予選で9番手に入ったヤルノ。トップ10内、しかも走行ライン側の奇数列グリッドを獲得したヤルノに、チームのだれもがグッドスタートを期待し、ポイント獲得を願った。
ところが、ヤルノは発進で出遅れてしまう。1コーナーで3つポジションを落としたヤルノは、その後シケインをショートカットしたブルツにもポジションを奪われて13番手に落ち、ポイント獲得は実現できなかった。
レース後、チームは原因を究明。データからいくつかの改良点を見つけた。要するに、スタートの精度を高めようと攻めすぎた結果、想定を超えた路面状況やタイヤコンディションに対して、うまく対応できないシステムとなっていたのである。
今年のF1は、エンジンの回転数が制限されたため、ストレートで前車をオーバーテイクするのが簡単ではなくなった。また、より空力が洗練されたクルマとなっているため、ストレート手前のコーナーで前車の背後に迫ることができず、なかなかスリップストリームに入ることができないのである。さらにタイヤがワンメイクとなったため、コーナー立ち上がりのグリップ力に差が生じにくくなったことも、オーバーテイクを難しくしている。
22台中20台が完走して、コース上に多くのクルマが走行していたにもかかわらず、高速モンツァでほとんどオーバーテイクシーンが見られなかったのは、そのせいである。オー・ルージュからケメル・ストレートへ向かう手前のコーナーは低速のラ・ソースであるから、モンツァの最終コーナーである高速パラボリカよりは前車の背後につくことは可能である。したがって、スパ-フランコルシャンでのレースでは、イタリアGPよりもオーバーテイクが見られるだろう。それでも、現在のF1において、スタートが最初で最大のオーバーテイクチャンスであることは変わりない。
グリッドだけでなく、ピット前でも今回スタート練習を繰り返していたパナソニック・トヨタ・レーシング(写真下)。スタートに注目したい。
次回、GP Diaryは9月16日に更新の予定です。
お楽しみに。
1コーナー
2007年9月16日
「いまいちなんて、どころじゃない。今回はスタート自体は悪くなかった。でも、1コーナーでのポジション取りがなあ。あれで、1つポジションを失ってしまった。その後、加速が鈍くなって、さらに順位を2つ落として、あっという間に13番手。それは仕方ないとしても、どうしてその後、2台に立て続けにオーバーテイクされたのかが理解できない。まさかスパイカーにも抜かれるとは思っていなかった」
レース後、フジテレビのカメラに向かってコメントしていた山科忠チーム代表のレース後の談話である。山科代表が悔しさをにじませていたのは、ヤルノのレース序盤のペースである。
確かに今回、パナソニック・トヨタ・レーシングの2人は悪くなかった。1つ前のイン側7番手からスタートしたマーク・ウェバー(レッドブル)と並走するヤルノ(写真左)。2台は並んだまま1コーナーに進入。しかし、スパ-フランコルシャンの1コーナーは鋭角なヘアピンカーブとなっているため、スタート直後は混乱しやすく、ポジション争いが激しくなる。ヤルノの目の前に、コースアウトしかけて、走行ラインに戻ろうとするニック・ハイドフェルト(BMWザウバー)がいたのである。
進路を塞がれる形で、ウェバーとラルフに先を越されたヤルノは、その後デビッド・クルサード(レッドブル)にもポジションを譲ってしまう。ここまではモニターにも映っているし、スタート直後の混乱を考えれば、納得がいく。しかし納得がいかないのは、その後である。なぜ、ロバート・クビカ(BMWザウバー)に抜かれたのだろうか。ヤルノは14周目に1回目のピットストップを行うが、クビカの1回目のピットストップは15周目。つまり、ヤルノのほうが燃料搭載量が軽いのに、クビカにオーバーテイクされたのである。
さらにその後、山科代表が語ったように、スパイカーのエイドリアン・スーティルに抜かれたという事実は、にわかに受け入れがたいことである(写真右)。なぜならスーティルに至っては、ヤルノよりも2周分重い燃料を搭載していたからである。そして残念だったのは、このシーンがモニターに映し出されなかったことと、チームリリースの中でヤルノがなぜスーティルにかわされたのかに触れなかったことだ。
スタートは改善された。しかし、スタートというのは発進だけを意味しているのではない。TMGの木下美明副社長は言う。
「スタートの良し悪しを決める要素は、5つあります。まずシグナルに合わせてクラッチをつなぐタイミング。次にクラッチミートしたタイミングでのエンジンのパワー。そして、その後いかに的確かつスピーディにシフトアップしていくか。さらに1コーナーまでのコース取りも大切となってくる。そして、最後にブレーキング」
スタート直後の1コーナーは、最初のコーナーであり、最大のパッシングポイントである。しかし、それだけがすべてではない。見えない区間で抜かれたヤルノを1コーナーで見ていた僕は、そう強く感じた。
次回、GP Diaryは9月21日に更新の予定です。
お楽しみに。