35℃
2008年3月13日
木曜日の朝、ホテルがあるダウンタウンから冷房の効いたトラム(路面電車)に乗って、アルバートパーク・サーキットに到着して驚いた。真夏のように暑いのである(写真右/日焼け止めなどが詰まったサバイバルキットをサーキットの入り口で売る係員)。メルボルンは夏でも湿度が低いため、高層ビルが立ち並ぶダウンタウンにいると、暑さが実感できない。直射日光を浴びながら、駅から約10分かけてプレスルームに着くときには、もうシャツはびっしょり。
熱があるのか、あるいは脂肪がつきすぎたのかと心配しながら、プレスルームに到着して、さらに驚いた。「オワリさ~ん、身体はなんともないですか?」という弱々しい声が背後から聞こえてきたのである。振り返ると、そこには某新聞社のTさんが立っているではないか。ボクは彼とその同僚とともに前夜、食事を採ったのだが、ホテルに帰ってから2名はそろって体調を崩してしまったそうだ。中華料理をみんなで食べ、みんなでビールを注ぎ合い、最後に全員同じ急須でお茶を飲んだのに……。
ボクはなんともなかったので、「食べたものに問題があるとは考えられないので、とりあえず今日は無理せず、しっかりと身体を休めたら」とアドバイスした後、天井から吊られたモニターを見て納得した。午前中の段階で気温はすでに35℃を超えていたのである。35℃といえば、日本では酷暑。ここは南半球だから、日本とは季節は反対。とはいえ、オーストラリアも3月に入れば、もう秋。2年前は寒くて、タイヤが温まらずにどのドライバーも苦しんだほどである。それが今年は、真夏のような暑さ。3月に入って日増しに暖かくなってきたとはいえ、まだ桜も咲いていない北半球から来た日本人にとっては、この暑さはなかなか厳しいのである。
ただ、1月のDiaryでも書いたように、ボクは12月から走り込みを続けていて、今年に入ってから3月12日までの段階ですでに総走行距離は340kmに達している。早朝にメルボルン入りした水曜日も、みんなが眠い眠いとプレスルームで目をこする中、コースを1周ジョギング。この年(44歳)で言うのもなんだが、若いときよりもいまが一番体力があると思っており、それが抵抗力となって、体調不良の一歩手前で、ボクの健康を維持していたのではないだろうか。
新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクターによれば、週末のメルボルンはずっと晴天に恵まれ、最高気温は連日35℃を超すという。ブリヂストンの関係者も、「日曜日の路面温度は55℃にも達する」と予想しており、今シーズンは開幕戦からいきなり厳しいコンディションの中でレースが行われそうだ。
ECU(エンジンコントロールユニット)が標準化されて初めてレースが行われるオーストラリアGP。スピードもさることながら、クルマの信頼性がいつも以上に問われる開幕戦となるかもしれない。
次回、GP Diaryは3月14日に更新の予定です。
お楽しみに。
変更
2008年3月14日
毎年のように変わるレギュレーション。今年もECU(エンジンコントロールユニット)が標準化され、トラクションコントロールシステム(TCS)が禁止されるなど、さまざまな変更が施された。
レギュレーションにはクルマの製造に関する技術的なレギュレーション(テクニカル)と、そのクルマを使ってどのように競技を運営していくかという、いわゆるルールとしてのレギュレーション(スポーティング)の2つがある。ECUの標準化は前者にあたり、この分野の変更は主に安全性や開発費の高騰を抑えるために行われている。
後者であるスポーティングレギュレーションで今年変更されたのは、予選フォーマットだ。こちらの変更は主にエンターテイメント性を高めることが目的され、今年は予選第1セッションが5分間延長されて15分間から20分間となり、予選第3セッションが5分間短縮されて15分間から10分間となった。
確かに15分間から20分間に走行時間が増加したことで、物理的に3回アタックが可能になったという点で予選第2セッション進出を賭けた16番手争いは一層エキサイティングなものになるだろう。さらに予選第3セッションが短縮されたことで、燃料を消費して車重を軽くするためのバーニング走行がなくなるだろうと考えられている。
しかし、それで即、緊迫したタイムアタックが見られるかどうかは、実際にオーストラリアGPの予選が始まってみないとわからない。というのも、今年から予選の予選第3セッションがスタートした時点からレーススタートまで、燃料を足すことができなくなったからである。予選第3セッションに進出するドライバーは、レーススタート時に搭載する予定の燃料に、予選第3セッションで走行する燃料を足してコースインしなければならない。つまり、かなり重い状態でアタックを敢行しなければならないのである。
果たして、そのような状態でのタイムアタックが、どれだけエキサイティングなものになるのだろうか。予選第2セッションの結果を見て、8番手とか9番手ぐらいしか狙えないドライバーなどは、タイヤを温存して(エンジンとギアボックスの温存にもなる)、最初からアタックに出ないなんていう事態も出てくるのではないだろうか。
どんな予選になるのか。案ずるより、見るが如し。午後2時(日本時間午後12時)を楽しみにしよう。
次回、GP Diaryは3月15日に更新の予定です。
お楽しみに。
Expectation
2008年3月15日
かなり燃料を積んだ状態でのタイムアタック合戦となったオーストラリアGPの予選第3セッション。ご覧になっていた皆さんの目にはどのように映っていたのだろうか。予選第3セッションに進出した10台のクルマは、燃料補給が許されないから、ますます「レースのスタートは日曜日ではなく、土曜日の予選から始まっている」という状況になったことは間違いない。
そこで気になるのが、予選第3セッションに進出したドライバーの燃料搭載量である。おおよその量は予選第2セッションと予選第3セッションのタイム差から割り出すことができる。下に記したのは予選でトップ10に入ったドライバーの予選第2セッションと予選第3セッションのタイム差である。
ハミルトン +1.527秒
クビカ +1.554秒
コバライネン +1.627秒
マッサ +1.487秒
ハイドフェルト +1.718秒
トゥルーリ +2.414秒
ロズベルグ +2.628秒
クルサード +2.978秒
グロック +3.429秒
ティモ(・グロック)の予選第3セッションのタイムは、セバスチャン・フェッテル(トロ・ロッソ)がタイムアタックができないのを見て、とりあえずタイムを残してポジションを1つでも上げておこうとしたものなので、あまり参考にならないが、そのほかのドライバーは以上のタイム差から、ある程度の予想は立てられる。
某チームのデータによれば、アルバートパークのフューエルエフェクト(燃料搭載量がラップタイムに与える影響)は、燃料10kgにつき約0.3秒である。このデータから算出するとハミルトンの燃料搭載量は1.527秒÷0.3秒×10kg=50.9kgとなる。アルバートパークは1周の燃費が約2.5kgだから、約20周分の燃料が搭載されているものと予想される。昨年も上位陣は19周目から23周目に1回目のピットインを行っているから、予選第2セッションと予選第3セッションのタイム差が1.4秒台のマッサから1.7秒台のニック・ハイドフェルト(BMWザウバー)までの5台は、オーソドックスな2ストップ作戦を敷いているものと考えられる。
それ以外のドライバーは約80kgの燃料を搭載してスタートを切るものと考えられ、もしそうだとしたら、1回目のピットストップは30周目ごろとなり、58周で争われるオーストラリアGPでは1ストップ作戦を敢行する者も出てくるのではないかと推測される。
もちろん、この計算は予選第2セッションをほとんど空タンクでアタックし、さらに予選第2セッションと予選第3セッションの両方のアタックでミスを犯さなかったことが前提となっているので、多少のズレは出てくるだろう。さらに今年からECUの標準化にともない、トラクションコントロールシステム(TCS)が禁止されただけでなく、スタート直後のエンジンマッピング変更がスタートから90秒間制限されることとなった。オーストラリアGPはその規制の下で行われる初めてのレースであり、波乱が起きても不思議ではない。
燃料搭載量は読めても、日曜日の午後5時すぎ(現地時間)に08年最初のチェッカーフラッグを受けるクルマが、どんな色かまではだれにも予測(expectation)できない。トラブルにより後方からのスタートを強いられることとなったドライバーたちの奮起に期待(expectation)したい。
次回、GP Diaryは3月16日に更新の予定です。
お楽しみに。
初入賞
2008年3月16日

日曜日のプレスルームは、いつもより夜が長かった。理由は2つある。ひとつはレースのスタート時間が、いつもより1時間半遅かったからである。午後2時スタートのレースだと、深夜0時過ぎにプレスルームに残っているメディアは10名以下だが、今回のオーストラリアGPではもうすぐ深夜1時になろうとしているのに、まだ26名のジャーナリストたちがキーボードをぱちぱちと叩いている。
そして、その26名のうち、9名が日本人である。もうひとつの理由がそこにある。レース後、ボクたちはドライバーやチーム関係者の話を聞いて回る(いわゆる取材である)。ところが、日本人として、この日どうしても直接話を聞きたい相手が、なかなかボクたちの前に現れてくれなかった。その相手とは中嶋一貴である。史上最年少日本人フル参戦ドライバーのデビュー戦。しかも、いきなりの入賞であるから、どうしても生のコメントが欲しいと考えるのは、当然のことである。
レースが終了したのが、午後5時すぎ。通常であれば、レース後30分から1時間後が取材タイムで、ウイリアムズからもグランプリ前に「一貴のレース後の取材時間は午後5時30分」という知らせが出されていた。しかし、その午後5時半に、一貴の囲み取材は開始されなかった。なぜなら、そのとき一貴はウイリアムズのガレージにいなかったからである。一貴がいたのはコントロールタワーだった。3度目のセーフティカーラン解除のときにロバート・クビカ(BMWザウバー)に追突した件で、レース審議委員会から呼び出しを受けていたのである。
「次戦マレーシアGPの予選結果から10番手降格」という処分が下されたのは、午後6時45分だった。ガレージに帰ってきてからもチームとのミーティングがあり、結局取材を開始できたのは予定より2時間遅れの午後7時半だった。
ボクたちの前に現れた一貴は、「ポイントは獲得しましたが、素直には喜べませんね」と苦笑い。
確かにどんな理由にしろ、追突は歓迎できるものではない。しかし、最年少日本人フル参戦ドライバーとしてのデビュー戦で、いきなり6位入賞。しかも、スタート直後とレース終盤に2度も事故に遭いながらである。この強運に何か不思議な力を感じるのは、ボクだけだろうか。
次回、GP Diaryは3月21日に更新の予定です。
お楽しみに。