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Rd.04 スペインGP

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第2の開幕戦

2008年4月24日

「クルマの性能を知りたければ、バルセロナへ行け」という言葉が、F1にはある。低速から高速までさまざまなコーナーがコンビネーションされ、さらに長いストレートも存在するカタロニア・サーキットは、メカニカル面や空力面などクルマの総合力が問われるレイアウトとなっている。そのため、多くの合同テストがここで開催されてきたし、チームによっては新車発表会をバルセロナで行うところも少なくない。

コースレイアウトだけではない。多くのテストがここで行われているということは、ここでしっかりと走り込みが行れ、どのチームも走行データは豊富だということだ。つまり、セットアップの進行状況にブレは少なく、スペインGPは金曜日のフリー走行から実力通りの結果がリザルトに反映される理由でもある。

また路面が比較的粗く、高速コーナーが存在するため、タイヤに厳しいことと、重量感度(燃料搭載量がラップタイムに与える影響)が大きいため、レース戦略に幅が出ないことも、バルセロナでの番狂わせを少なくしている要因となっている。特に昨年からは日曜日のレースで必ず2種類のタイヤを一度は装着しなくてはならなくなったため、各スティントの長さはおしなべて平均化する傾向にあり、燃料搭載量を自由に設定できる予選11番手以下のドライバーによる奇襲作戦も、最近はほとんど見られなくなった。

そのため、速いクルマを手にしているドライバーにとって、バルセロナは走りがいのあるサーキットである一方で、パフォーマンスがあまり高くないクルマを運転するドライバーにとっては、まるで地獄のような場所。18戦中、もっとも走りたくないグランプリだといってもよく、グランプリ期間中に発せられるコメントにも覇気が感じられないことが多い。

今年も2月に合同テストが行われ、スペインGP直前にも大規模な合同テストがカタロニア・サーキットで開催された。ただし直前のテストでは、09年に向けてスリックタイヤ(溝なしタイヤ)やダウンフォースを意図的に削減した仕様のクルマを走らせたりしたため、記録されたラップタイムは必ずしも現在の実力を反映したものではなかった。

開幕から1カ月以上が過ぎ、どのチームも空力パッケージを一新してくるスペインGPは第2の開幕戦でもある。開幕3戦とは異なる新しい戦いは、今シーズンを占う重要な一戦でもある。

次回、GP Diaryは4月25日に更新の予定です。
お楽しみに。

エボリューション

2008年4月25日

各チームが新しい空力パッケージで臨んでくるヨーロッパラウンド緒戦。パナソニック・トヨタ・レーシングは4つのニューパーツを投入してきた。

ひとつは4月11日のDiaryでも触れたように、新しい形状のフロントウイングが装着されたノーズである。フロントウイングは中央の湾曲が大きくなり、ノーズには流線型のカナードが車載カメラ搭載位置に装着された。コーナリング中のダウンフォースを安定させる効果を狙ったものだと考えられ、いまやF1界のトレンドになりつつある。

2つめはアッパーボーダーウイング(トヨタはトップクラッシュウイングと呼んでいる)から、ほぼ垂直に下に伸びた細長いボードである。このボードは真下にあるバージボードと連結し、サイドポンツーン周辺の風の流れをコントロールしており、トヨタのほか2チームが同じような処理を行っている。

3つめはチムニーダクトが完全にふさがったことだ。つまり、サイドポンツーン上のこの煙突のような突起物は、完全に空力パーツとして存在しており、ラジエターの排熱はルーバーフィンが代役を務めることとなった。

そして最後の4つめが、リアタイヤのホイールカバー(トヨタではリムブランキングと呼んでいる)である。可動する空力パーツは禁止されているため、この手のパーツを採用するチームの多くは、「これは空力パーツではなく、ブレーキの排熱を効果的に行うための冷却パーツのひとつ」と唱えているが、これがタイヤ周辺の空気の流れに貢献していることは、間違いない。

パナソニック・トヨタ・レーシング以外で注目を集めた新パーツは、トンネルが施されたノーズコーン(フェラーリ)。蝶のはねのようなフィンが装着されたノーズ(ホンダ)。スクエアに大きく段差したフロントウイング(ウイリアムズ)。シャークフィンタイプのエンジンカウル(ルノー)である。

F1の戦いは、進化するスピードの戦い。そのことをあらためて実感したカタロニアの春だった。

次回、GP Diaryは4月26日に更新の予定です。
お楽しみに。

アタック

2008年4月26日

1回目のアタックを終えて、トップタイムをマークしていたロバート・クビカ(BMWザウバー)から、第2セッションの最下位である16番手のセバスチャン・ブルデー(トロ・ロッソ)までのタイム差はわずかに1.2秒。スペインGPの公式予選は近年稀に見る大接戦となった。

第3セッション進出を賭けて、トップの2台であるクビカとキミ・ライコネン(フェラーリ)を除いて、14台のクルマがコースインしたとき、パナソニック・トヨタ・レーシングのティモ・グロックの順位は10番手だった。F1の予選はほかのカテゴリーに比べて、路面に急激にラバーが乗る。その中で限界ギリギリでアタックするというのは、それまでいろんなレースで揉まれてステップアップしてきたF1ドライバーにとっても、難しい作業となる。それはF1直下のカテゴリーであるGP2シリーズを戦ってきたドライバーも例外ではない。

GP2シリーズはF1への登竜門として、F1へステップアップするために最適なカテゴリーだと言われている。各国の強者たちが集結するシリーズの中で、ワンメイクのシャシーとエンジンで競い合うGP2は、腕を磨く舞台としては最適かもしれない。しかし、予選となると、そこにクエスチョンマークがつく。というのも、GP2のタイヤはF1よりも硬めで、タイヤウォーマーも使用が許されていないため、タイヤが適正温度まで上昇するのに5周以上を要する。つまり、アウトラップを走って、即アタックに入るF1の予選とは走り方が異なるのである。

昨年のGP2シリーズの覇者であるティモも、そのひとりだ。ウインターテストからどうしてもアタックまでにタイヤを温めきれない。そのため、アタックでの最初のセクターで自己ベストを更新できないことが少なくなかった。その反省にたって、アウトラップでタイヤを温めすぎると、今度は最終セクターまでにタイヤのおいしいところを使い切ってしまい、アタック後半のタイムが伸びないという日々が続いた。

今回のスペインGPの予選第2セッションの2回目のアタックも、特にミスを犯したわけではなかったが、やはり自己ベストを更新できず、10番手から4つポジションを落として予選を終えた。もちろん、トップ10内には06年のGP2王者であるルイス・ハミルトン(マクラーレン)をはじめ、GP2経験者が3人いるので、それだけが予選第2セッションでティモが自己ベストを更新できなかった理由ではない。しかし、06年のシリーズ2位のネルソン・ピケ(ルノー)が4戦目でようやく第3セッションに進出できたように(05年のシリーズ2位だったヘイキ・コバライネンも昨年は第3セッション進出までに4戦を費やした)、F1の予選には独特のテクニックが必要であることも事実である。

第2セッションでティモが記録したタイムは1分21秒230。10位のマーク・ウェバー(レッドブル)との差は、わずか0.181秒差だった。

次回、GP Diaryは4月27日に更新の予定です。
お楽しみに。

誤報

2008年4月27日

すでに2回のピットストップを予定通り済ませていたトゥルーリが53周目にピットインしてきたとき、ボクはヤルノ・トゥルーリのクルマに何かトラブルが発生したのだと思った。

残念ながら、3回目のピットストップのシーンがモニターに映し出されなかったため、ボクはプレスルームにある自分の席を離れ、メインストレートを走るトゥルーリのタイヤを注視していた。ピットインした後、すぐにピットアウトしたというデータがタイミングモニターから読み取れたので、可能性としては、タイヤの空気圧に問題が起きてタイヤ交換をしたのだと考えたからだ。

それならば、交換するタイヤはこの日のバルセロナでパフォーマンスが高かったミディアムにタイヤを交換して走行しているに違いない。果たして、メインストレートに帰ってきたヤルノのタイヤには、ミディアムを示す白線はなかった。

そこでレース直後にヤルノにその理由を尋ねると、ヤルノは複雑な表情でこう話してくれた。

「『フロントウイングを変えるからピットインせよ』って、無線が入ったから、ピットインしたんだ。でも、その情報が間違っていたんだ」

何が起きたのか飲み込めなかったボクは、「ハンドリングに問題があって、フロントウイングを変えようとしたんですか」と再び聞くと、ヤルノは少し不機嫌そうに「そうじゃないよ、チームが間違って僕をピットに呼んだんだよ」と言って、会話を打ち切った。

真相はこうだった。ヤルノに「ピットインせよ」という無線が入ったのは、53周目。そう、ティモ・グロックがデビッド・クルサード(レッドブル)と接触した周回だった。その画面がモニターに映った瞬間、ヤルノの担当レースエンジニアが「接触してフロントウイングが壊れたのはヤルノ」だと勘違いし、シケインを立ち上がろうとしていたヤルノを無線で呼び込んだのである。

確かに単純なミスではある。犯してはならないミスであることも確かだ。しかしレース後、パナソニック・トヨタ・レーシングのモーターホームで緊急ミーティングの輪の中にいたヤルノの担当レースエンジニアを、ボクは責める気持ちにはなれなかった。

53周目、ティモがレッドブルのクルサードと絡んだとき、ヤルノの前を走行していたのもまた、レッドブルのマーク・ウェバーだった。あってはならないミス。しかし、ミスから学ぶことができるのも、人間である。クルマだけでなく、チームも進化して、トルコGPに戻ってきてほしい。

次回、GP Diaryは5月2日に更新の予定です。
お楽しみに。

Be aggressive

2008年5月2日

ピットからの誤ったコミュニケーションによって、6位から8位へと2つポジションを落としたスペインGPでのヤルノ・トゥルーリとパナソニック・トヨタ・レーシング。このレースで、ボクはほかにも気になることがあった。ティモ・グロックである。

3戦連続で入賞しているヤルノに対して、この日のレースでも神様はティモに微笑んではくれなかった。スタート直後の1コーナーで他車と接触したティモは、序盤フロントウイングの下面に付いている小さな空力パーツを失い、本来TF108が持つ空力性能を発揮できない苦しい走りを強いられた。セバスチャン・ブルデー(トロ・ロッソ)とアンソニー・デビッドソン(スーパーアグリ)が相次いでリタイアしてから、ティモの後ろを走っていたクルマは1台のみ。1回目のピットストップとなる25周目までの14周にわたって後方に沈んだままだったのには、そんな理由があった。

それでも、1回目のピットストップでノーズごとフロントウイングを交換したティモは、その後自分の走りを取り戻し、前を走るデビッド・クルサード(レッドブル)を約1秒差で追いかけ回していた。しかし、昨年からカタロニア・サーキットはレイアウトが一部改修されたため、オーバーテイクしにくいコースとなっていた。そのため、コース上でティモがクルサードを抜くことはできなかった。しかも、2回目のピットインはティモのほうが1周クルサードよりも早かった。

ところが2回目のピットストップを終えてコースに復帰したクルサードのアウトラップが遅かったため、ティモは4コーナーで追いついたのだ。そして、5コーナーで仕掛けた。確かにクルサードのイン側に十分なスペースがなかったし、相手が今シーズン接触事故の多いクルサードだということを考慮すれば、あそこでは仕掛けるべきではなかったかもしれない。しかし、目の前でふらふらと走っているクルマを見て、オーバーテイクを仕掛けようともしない者は、そもそもコース上を走る資格などないとボクは考える。例えば、そのまま走っていればチャンピオンシップを獲得できるというような、特別な状況を除いては……。

だからレース後、ティモがどんな様子だったか、気になった。「どういう状況だったか、教えてもらえますか」と尋ねると、「たぶん、タイヤが十分に温まっていなかったせいか、クルサードのペースがすごく遅かったんだ。だから、行くしかなかった。それだけだよ」

フランク・ウイリアムズがかつて中嶋一貴に与えたアドバイスを引用するならば、「オーバーテイクをしようとしたティモの行為はレーシングドライバーとして悪くはない。ただ、それを行ったタイミングと場所を間違えただけ」。この一件で、消極的にならないことを祈りたい。

次回、GP Diaryは5月9日に更新の予定です。
お楽しみに。