「If...」
2008年7月11日
シルバーストーンのプレスルーム。レース終了後に斜め向かいの席から歓声が沸き起こった。インターネットを通じた映像を通して見たスペイン人選手がテニスのウインブルドン大会で優勝した瞬間だった。時計の針を見ると、すでに夜の9時すぎ。その瞬間、フェデラーの史上最多となるウインブルドン6連覇の夢が破れたと同時に、決勝が稀に見る大接戦だったことを予感させた。翌日の地元の新聞を見ると、試合時間は4時間48分の大熱戦。ウインブルドンの決勝戦史上最長の試合だったと書かれてあった。
なぜ、そんなことを書いているのかというと、ボクはF1の取材を始める前、テニスの取材をしていたからである。いまでもテニスの試合は気にして見ている。特にヨーロッパラウンドに入って、フレンチ・オープンやウインブルドン選手権が同時期に開催されていると、「身体が2つあったら、取材に行きたいなあ」と思ってしまうことがある。
そのウインブルドンには、かつてセンターコートにこんな詩が刻まれたプレートが飾られてあった。
「If you can meet with Triumph and Disaster And treat those two impostors just the same;」
これは1907年にノーベル文学賞を授賞したイギリスの小説家ルディヤード・キップリングの「IF...」という4章からなる詩の2行をとったものである。
翻訳すれば、「もしも、あなたが勝利と敗北に直面し、なおこの相反する2つの事実を同じものとして対峙することができるなら……」と、なるのだろうか。
これはテニス界では有名な言葉で、多くの指導者が格言のように使っている名台詞である。その裏には、「勝ったり負けたりすることに一喜一憂しないで、常にベストを尽くしなさい」という意味が込められていると聞いた。勝負には必ず勝者がいて、敗者がいる。だから、勝負に臨む前、あるいは勝負をしている最中に、だれしもが敗北を喫してしまうことへの恐怖心にさいなまされるものである。しかし、ベストを尽くせば、たとえ敗れても、それは勝者があなたより素晴らしかったのだから、あなたは敗北を受けいることができ、勝者を称えることができるというのである。
フランスGPでパナソニック・トヨタ・レーシングが2年2カ月ぶりに表彰台に上がったとき、パドックに帰ってきたトヨタのスタッフに駆け寄って、「おめでとうございます」と言った人がいたという。ホンダのスタッフである。そのホンダがイギリスGPで1年9カ月ぶりに表彰台に上ったのは、雨による幸運だけではなかったとボクは思う。そして、そのホンダにシルバーストーンで「おめでとう」と祝福の言葉を投げかけたトヨタのスタッフ。
ベストを尽くして戦っている者だけにしかわからない世界を見たような気がする。
次回、GP Diaryは7月17日に更新の予定です。
お楽しみに。
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ifさん|2008年7月11日22時43分
フェラーリとマクラーレンのスタッフも、お互いにそういうことするんだろうか?
スプートニクさん|2008年7月12日11時11分
件のウィンブルドンのプレートはまだあるようです。中継で見かけました。
切磋琢磨さん|2008年7月12日21時3分
Nice guys HONDA