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Rd.11 ハンガリーGP

  • Diary by 尾張正博
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スタート

2008年8月8日

ハンガリーGP決戦前夜となった土曜日の夜、サーキットで仕事するパナソニック・トヨタ・レーシングのエンジニアと、TMGのファクトリーにいるエンジニアとの間で論戦がかわされていた。それは決勝レースでのスタート時の路面のミュー(摩擦係数)を、どのレベルに設定するかだった。

通常のサーキットではピットレーン出口にスタート練習用のスペースがあり、そこでフリー走行中に何度か練習して、データを収集。それを元に決勝当日のグリッド上の路面のミューを推測して、マッピングの合わせ込みを行う。ところが今年のハンガロリンクは、そのスタート練習を行う場所のアスファルト舗装だけが修繕されていた。そのため、トヨタの木下美明TMG副社長をはじめ、首脳陣たちは異口同音に、「スタート練習場所で収集したデータは参考にしないほうがいい」と、レースエンジニアたちにアドバイスを送っていたのである。そこでレースエンジニアたちは、通常のアプローチとは異なる方法で、レースでのスタート準備に取りかかった。

パナソニック・トヨタ・レーシングのエンジニアたちが行った作業とは、昨年と今年の本コースの路面のミューを比較し、さらに昨年のスタート時のグリッド上のミューと本コースのミューのデータを照らし合わせ、今年のグリッド上のミューが最終的にどれぐらいのレベルになるのかを推測することだった。土曜日の夜に行われた最終ミーティングに向けてエンジニアから提出されたレポートは、ミューに関するものだけで約10枚にも上ったという。そして、そのレポートを元に、日曜日のグリッド上の路面のミューを算出し、スタート用のマッピングの調整を行ったのである。

果たして日曜日のレースで、ティモ・グロックがスタートで見事に好ダッシュを決め、ロバート・クビカ(BMWザウバー)をかわして4番手に上がった。もし、スタートでクビカを抜けずにいたら、ティモのレースは違った展開になっていたかもしれない。そういう意味では、今回の2位表彰台は、土曜日の夜にチームのエンジニアたちが出した結論が、大きく貢献していたと言ってもいいだろう。

ただし、チームメートのヤルノ・トゥルーリが若干スタートで出遅れていたことでもわかるように、路面コンディションの差は微妙。一歩間違えれば失敗にもつながる、難しい作業だったわけだ。したがって、今回成功したからといって、次のレースでも成功するという保証はどこにもない。

それでも、このスタートの調整だけでなく、ハンガリーGPではチームスタッフが随所に光る作業を披露していた。ティモの1回目の給油でリグのトラブルが発生したとき、チームが落ち着いて予備のリグに切り替えて被害を最小限にとどめたことは、すでにご存じのことと思う。もうひとつは、2回目のピットストップを予定よりも少し早めに変更したことである。前を走るヘイキ・コバライネン(マクラーレン)を追いかけることも大切だが、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)がタイヤトラブルで後退して3番手に上がった41周目以降、2番手を狙うよりもセーフティカーを警戒して3番手を確実にするために、早めにピットインしてしまう作戦のほうが賢明である。木下美明TMG副社長がそう思っていたとき、レースエンジニアたちが自分たちでそのように動いたのである。

「クルマだけでなく、チームが成長している様子を肌で感じた」

今年3度目の視察に訪れていた岡本一雄副会長の目には、近づきつつある頂点が見えていたのかもしれない。

次回は8月22日に更新の予定です。
お楽しみに。

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