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Rd.08 イギリスGP

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KERS

2009年6月23日

イギリスGPのレースで、よく映像に映し出されていたのがBMWザウバー、ルノー、マクラーレンによるバトルである。その画面をボクは不思議な気分で観ていた。それはこの3チームが、元KERS(運動エネルギー回生システム)搭載車だったからである。

この3チームの中で最初にKERSの搭載を見送ってきたのが、開幕戦のBMWザウバーだった。体重の軽いニック・ハイドフェルトには搭載したが、ロバート・クビカは搭載することはなかった。

続いて、中国GPでルノーが取り外し、今回イギリスGPでマクラーレンが取りやめた。現在、使用を続けているフェラーリのステファノ・ドメニカリ代表も、「採用したのは失敗だった」と認めている。

パナソニック・トヨタ・レーシングも採用する準備はしていたが、どうしてもメリットを見いだせないとして、レースでの採用は見送ってきた。トヨタは市販車でプリウスというハイブリッド車を販売しており、KERSに対しても一日の長があるはずである。しかし、「だからこそ、採用を見送ることができた」と木下美明TMG副社長は語る。

「F1のKERSはとてもプリミティブ(原始的)なんですよ。市販車では、ブレーキング時に電子制御で違和感がないようにブレーキをコントロールしています。しかし、F1はそれが許されていないから、ドライバーがブレーキを踏むと、リアだけエネルギー回収用の制動力が上乗せされる。さらにその回収したエネルギーを使用するときには、ボタンを押さなければならない。こんなシステムなんてあり得ない。市販車ではそのへんを電子制御でコントロールして、渋滞の中を走るときと高速道路を走るときとで自動的に切り替えることができるし、十勝24時間でレースをしたトヨタのハイブリッドも、燃費ベストかパワーベストかを選択して、あとはコンピュータが制御していた。ところがF1のKERSは、基本的なところがまったくわかっていない。これでは市販車の技術にフィードバックなんかされないし、地球環境にも全然やさしくない。そんな技術に何十億円、何百億円という大金を注ぎ込むなんて、われわれには価値が見いだせない。だから、何度もFIAにシステムの変更を提案したんですけどね……」

ちなみに、開幕4戦のアジア・オセアニアラウンドでは、KERSに使用していたバッテリーは現地で使い捨てしなければならなかった。リチウム製の電池をヨーロッパのファクトリーから開幕戦のオーストラリアへ輸送した後、引き続きマレーシアへ移送しようとすると、国連法(危険物輸送に関する勧告)が適用されるからである。もし、移送しようとするならば、バッテリーの安全性を証明するための試験を受けなければならず、それを行う費用は1回につき、約1億円かかるという。ヨーロッパからオーストラリアへの輸送は試作品であれば、自国の許可を得るだけで良い。しかし、オーストラリアからマレーシアへ移送するには国連法が適用されるのだ。環境面からの疑問を投げかける関係者も少なくない。

ここまで書くと、まるでKERSが悪者のようになっているように思われるかもしれない。しかし、本当に悪いのはKERSではない。KERSという優れたアイデアを現在のようなシステムでしか採用させなかった、一部の人間である。

次回は7月10日に更新の予定です。
お楽しみに。

コメント

YYYさん|2009年6月25日12時18分

新しい技術を導入するのはいい事だと思います.
それをルールを作る側が,台無しにしてしまうなんて残念です.

新体制のFIAのもと,市販車にフィードバックできるようなKERSの
システムが導入されるといいですね.

最新技術と速さで競い合うF1であって欲しいです.

にこ坊さん|2009年6月25日13時56分

前の型のプリウスが発売されたときの販促パンフだったかな?
TMGのメカニックへのインタビューで
(Q.プリウスのハイブリッドシステムでF1に応用してみたいものはありますか?)
A. 回生ブレーキには魅力がある
みたいなことが書いてあった記憶があります(違ってたらすいません)。
なので、KERSを導入しようという発想自体は決して悪くはなかったし、素人目には「トヨタに超アドバンテージじゃん!」と思って熱烈に期待したものでした。

ふたをあけてみたらこの通りでしたが…。
KERSの搭載を強制しなかったことだけはFIA側の正しい判断でしたね。


どうやらF1は分裂を回避してFIAトップの退任と段階的予算制限で和解したらしいので(個人的にちょっと残念)、新体制には、表面上の問題解決ではなく、長期的かつ根本的な改善を期待します。

セフィさん|2009年6月27日12時33分

うまくいくわけないと想ってた。えまず義務化してない時点でおわり。
トヨタ有利かと思いきや苦戦してる情報がよくあったので期待はしてなかった。
結果的に使わないほうが良いって判断したのは正解かと。
なにはともあれKERS採用とゆうFIAの考えは悪くはないんだろうけど
KERSの最低重量などいろいろ規則つけるべきだったのではと。

cubic-mさん|2009年6月28日11時41分

FIAもKERSのルールを作るときにトヨタに相談していたらしいですね。当初の草案ではハイブリッドカーのようにモーターがエンジンをサポートするもので、現在のKERSの形とは違っていた…。
いつしか、FIAはぱったりとトヨタに相談しなくなり、欧州メーカーの意見を聞くようになったと聞きます。欧州メーカーにしてみればKERS開発でハイブリッド部門で優位に立とうとしたわけだし、FIAも欧州メーカーの声を聞いてしまった。結果できたのが現在のKERSシステムといわれています。

あれほどFIAに噛み付いていたFOTAですが、KERS導入の失敗に関してはFIAにほとんどコメントを残していない。自業自得が身にしみているのでしょうか?

トヨタさんにしてみれば「ほれ、みたことか…(笑)」という感じでしょうね。

とはいうものの、トヨタも嫌々ながら(本当に嫌がっていたましたが…)KERS開発を進めていたらしいですが、どのようなシステムなのか興味があります。
バッテリーはパナソニック製?システムは電機式orフライホイール?
重量や冷却系はどんなシステム?

まぼろしの「トヨタKERS」。機会があれば取材よろしくお願いします。

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