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Rd.09 ドイツGP

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変化

2009年7月10日

2年ぶりにニュルブルクリンクに帰ってきたら、新しいホテルが隣接されていた。グランドスタンド裏にも新しいアリーナが建てられていて、さらにグランドスタンドとの間にはジェットコースターが新設されていた。メディアセンター自体に変化はなかったが、2年前までコンピュータの通信用に使われていた電話室には、モデムと接続用のモジュラージャックが1本しかなく、それを使用しているジャーナリストは見あたらなかった。代わりにプレスルームには「ワイヤレスネットワーク」という見えない電波が飛び回っていて、モジュラージャックを使用するために電話室へ足を運ぶジャーナリストはもういない。

1年前にホッケンハイムリンクで開催されたドイツGP時のDiaryでも書いたが、現代における2年間の変化というのは、ボクたちが想像しているよりもずっと速い。……そんなことを、交互開催となっているドイツGPにやってきて、あらためて実感した。

そんなニュルブルクリンクで、変わらないものにも出会った。それはグランプリ前日の木曜日に開催されていた「リンク・タクシー」というイベントである。

リンクとはドイツ語でサーキットを意味する。サーキット・タクシーといっても、運転手はF1ドライバーだ。各チームのF1ドライバー(チームによってはテストドライバー)が市販車の助手席や後部座席にお客さんを乗せて、サーキットを1周、激走するというニュルブルクリンクで人気のイベントである。そのイベントが、今年も開催されていた。

そのイベントの取材を終え、ホテルへ向かう途中に毎年通っていたレストランに立ち寄った。すると2年ぶりにもかかわらずオーナーは顔を覚えていて、「コンニチハ」と日本語であいさつしてくれた。メニューにはいくつか新しい料理が加わったが、オーナーの優しさに変わりはなかった。

ボクたちが作り出すモノや技術は変化するが、人間は人間のままだ。

変化するモノと、変わらない者。

イギリスGPからクルマは進化を続けているが、未来のF1を巡る人間同士の争いに進化は見られない。2010年の今日、F1はどのように変化しているのだろうか。そして、変わらずにF1を続けている者はいったいどれくらいいるのだろうか。そんなことを考えずにはいられない、ニュルブルクリンクの週末である。

次回は7月11日に更新の予定です。
お楽しみに。

反省

2009年7月11日

ちょっとした判断の遅れが、大きく結果に響いた予選だった。

まず最初のつまずきは、最初にコースインしたときのタイヤ選択にあった。ヤルノとティモが最初に履いたタイヤは、ミディアム。今回ニュルブルクリンクに持ち込まれたタイヤは、スーパーソフトとミディアム。当然、グリップ力の高いスーパーソフトが予選では本命タイヤとなる。ただし、スーパーソフトは4セットしかないため、Q1では軟らかい方のタイヤを温存する傾向がある。

しかし、この日の予選は、雨がいつ降っても不思議ではない状況でスタートしていた。そこでほとんどのチームはグリーンランプ点灯と同時にコースインしたばかりでなく、最初のアタックから惜しげもなくスーパーソフトを投入していった。最初のアタックでミディアムを履いたチームは、トヨタのほかに1チームしかなかったという。

そのため、ミディアムを履いて記録したパナソニック・トヨタ・レーシングの2人のベストタイムは14番手と15番手に終わる。ブリヂストンによれば、スーパーソフトとミディアムの一発のタイム差は0.7秒。もしスーパーソフトを最初から投入していれば、1分32秒469を記録していたヤルノは1分31秒7で4番手。1分32秒520だったティモも、1分31秒8で6番手付近にはいることができたと思われる。

そして、迎えた2回目のアタック。絶対にミスが許されない最後のアタックで、予選巧者のヤルノは1分31秒760のタイムを記録してQ1を突破する。しかし、今シーズン予選でのパフォーマンスに課題を残していたティモは、スーパーソフトでの1回目のアタックで1分32秒423にとどまり、17番手まで降格してしまう。そして2周連続アタックとなった翌周に、シケインで痛恨のミス。

ここでピットインして、タイヤを交換して3度目のアタックに出ていれば、状況はまだわからなかった。しかしティモは、そのままコントロールラインを通過して3周連続アタックに向かってしまう。燃料が軽くなったとはいえ、3周連続でアタックすれば、タイヤはタレてくる。自己ベストを更新できなかったティモはピットインして、タイヤを交換。しかし、3セット目でのアタックは小雨に見舞われ、結局自己ベスト更新はならなかった。

これでヤルノひとりだけとなったパナソニック・トヨタ・レーシングは、天候が目まぐるしく変わるQ2でも、後手を踏んでしまう。それはインターミディエイトタイヤからドライタイヤへのスイッチだ。

インターミディエイトタイヤでのタイムアタック合戦で10番手のタイムをマークしていたヤルノだが、すでに路面はドライタイヤでも走行可能な状態に改善されていた。そこで各チームはドライバーをピットへ呼び、タイヤを交換。ネルソン・ピケ(ルノー)、エイドリアン・スーティル(フォース・インディア)らが、大きく順位を上げていった。

ヤルノもタイヤを交換したが、そのとき再びニュルブルクリンクに雨が落ち始めたため、タイムを更新することはできなかった。雨が降ってきたことは不運であり、ほかにも何人かのドライバーがタイムを更新できずにQ2で脱落していることを考えれば、トヨタとヤルノだけが責められるべきではないだろう。しかし、Q2のインターミディエイトでのアタックを3周も行っていたのは、ヤルノただひとりだった。

「インターミディエイトで引っ張りすぎたことは、反省しなければなりません」

予選は終了したが、まだレースは終わっていない。その反省を日曜日のレースに活かせば、チャンスはまだある。日曜日の降水確率は50-70%と予報されている。

次回は7月14日に更新の予定です。
お楽しみに。

テスト

2009年7月14日

「なぜ、一貴と接触して2周目にフロントウイングを交換するためにピットインしたとき、燃料を満タンにして事実上の1ストップ作戦に切り替えなかったのか」

レース後の会見で、新居章年テクニカルコーディネーション担当ディレクターにそう尋ねると、新居章年DTCは「2人で同じ作戦を採っても……」と返答した。しかし、ほとんど最後尾に下がったヤルノが、ほかの多くのライバル勢と同様の2ストップ作戦を続けていても、逆転するのは難しい。1周目にピットインしたルイス・ハミルトンに対して、マクラーレンは燃料を足して事実上の1ストップ作戦に作戦を変更している。

不甲斐ない予選を見せられた翌日に、あと一歩というところでポイントを取り逃したフラストレーションもあってか、新居章年DTCの応えに納得がいかず、再び質問したが、答えは同じだった。納得できなかったが、ほかにも質問したい人はいるだろうし、第一、自分はパナソニック・トヨタ・レーシングの一員ではないので、それ以上、チームの決断に口出しするような質問をするのはやめた。

レース後、ファステストラップの順位を見て、おやっと思った。トップと同一周回でフィニッシュしたドライバーの中で最下位だったヤルノが、全体で2番目に速いラップタイムを記録しているのである。それを見て、「もしかして……」と思って、ハミルトンのファステストラップを見た。ハミルトンは15位。今回マクラーレンはBバージョンとも言えるほど、空力パッケージを変更してきた。そして、フリー走行2回目と3回目でトップタイムをマーク。予選でも5位。ブラウンとレッドブルという、2強の背後に迫るスピードを披露した。ところが、予選は雨がらみ。フリー走行2回も途中で雨が降り、フリー走行3回目も曇り空の低温の中でのセッションだった。つまり、これから夏本番を迎える後半戦に向けて、各チームのマシンが現時点でどのようなポテンシャルを秘めているのか、いまひとつハッキリしないまま、ドイツGPは日曜日に突入していた。

迎えたレースデーの日曜日。午前中は雨が残っていたが、午後のニュルブルクリンクは青空が広がり、路面温度も30℃以上に達した。第2のホームグランプリに新しくなった前後のウイングを持ち込んでいたパナソニック・トヨタ・レーシングにとって、コンディションは整ったのである。新空力パッケージがどのようなパフォーマンスを見せるか……。ドイツGPが始まる直前、チームのトップエンジニアのひとりは「今回のフロントウイングは、これまでと違う方向性に振ったモノ。それがどんな結果を出すか、楽しみ」だと答えていた。ところが、スタート直後にヤルノが接触。通常であれば、燃料を足してあと1回のピットストップでレースを続行させるところを、敢えて2ストップ作戦でレースに復帰させるのである。

これはボクの推測だが、トヨタはティモでもポイント獲得がギリギリの状況なのだから、ここでヤルノの作戦を変更しても入賞は難しい。ならば、ヤルノには順位に関係なく自分のペースで走ってもらい、新空力パッケージのデータを取ることをレースの主眼にしたのではないだろうか。

そういえば、最後尾に落ちたハミルトンが無線で「エンジンとギアボックスをセーブするために、リタイアしたほうがいいんじゃないか」とチームに尋ねたとき、レースエンジニアは「そのままレースを走り続けなさい」と諭すシーンがあった。あれも、恐らく新しい空力パッケージが日曜日の温かい路面コンディションで、どのようなパフォーマンスを見せるのかというデータ取りのためだったのではないかと、ボクは勝手に考えている。シーズン中のテストが禁止されている今年、レースで結果が望めなければ、すぐにあきらめるのではなく、テストの場として有効活用しようというのが今シーズンの戦いなのだろうか。

レース後、ボクはそのエンジニアに会う機会はなかったが、別のジャーナリストによれば、「ヤルノがオープンエア(前後にライバルがいない状態)でしっかりと走り込んでくれたおかげで、いいデータが取れました」と語っていたという。さらに、次のようにも語っていたという。

「これでハンガリーには自信を持って、新しいリアウイングを投入できます」

どんなウイングを持ち込むのか。2週間後を楽しみにしたい。

次回は7月24日に更新の予定です。
お楽しみに。